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エゴノキの実とエゴヒゲナガゾウムシ 2006/07/04(その1)
 エゴノキの緑白色の実が目立つようになってきた(写真上)。実のつき方は木によってずいぶんと差があるが、もっとも実の数が多いエゴノキを選んで撮影してみた。

 そして、林床をくまなく見ていくと、去年あるいは一昨年にエゴノキから落ちた種子がころがっている。
 茶色したラクビーボール型の種子を一粒一粒ずつ拾っては、さらに細かく見てみる。そして、選び抜いた種子を慎重に割り開いてみると、

 (写真中)/エゴヒガナガゾウムシのオスの蛹、や

 (写真下)/そのメスの新成虫(羽化直後)が見つかる。

 このエゴヒゲナガゾウムシたちが、エゴノキの実へと飛来してくるのはもうじきのことで、例年7月の半ばから末にかけてが成虫の活動シーズンとなる。

 エゴヒゲナガゾウムシの蛹や新成虫が入っている種子を見分けるポイントを知りたい方は、拙著「珍虫の愛虫記」(北宋社)をご覧いただきたい。
 またエゴヒゲナガゾウムシの生活史については、来年出版予定の本でも掲載する予定でいる。新開 孝

イチモンジチョウ幼虫と寄生バチ 2006/07/04
 午前5時45分ころ、イチモンジチョウ幼虫の体に白い小さな幼虫がくっついていることに気付いた(写真上)。

 その小さな幼虫はコマユバチの仲間である。この寄生バチの幼虫はイチモンジチョウの体内で、宿主の生命には差し障りない程度に栄養を横取りして成長したのである。
 成長を遂げたコマユバチ幼虫は、イチモンジチョウ幼虫の体皮を喰い破り、外へと体を乗り出して、繭を紡ぎ始めたわけである。
 
 姿を現したコマユバチ幼虫は全部で8匹。
 そしてイチモンジチョウ幼虫の背中には8個の繭が並んだ。

 保育社の「原色日本蝶類生態図鑑(2)」によれば、このコマユバチの同定はできていないとある。新開 孝

チャタテムシの羽化 2006/07/03(その1)
 エゴノキの幹でチャタテムシの一種の幼虫が群れていた。
 群れの中には、羽化したばかりの成虫の姿も混じっている(写真上)。

 この様子だと羽化する場面も見られるだろうと少し待ってみた。
すると数分もしないうちに、2匹の幼虫が次々と羽化脱皮を始めた。

 このチャタテムシの触角は体長の数倍の長さがある。したがって、脱皮するときには、二本の触角を抜き取るのに時間がかかる。

 触角が全部抜けて、最後にお尻を殻から抜くと、羽化脱皮が終了し、体勢を立て直してからじわじわと、翅を伸ばす。しかし、翅を伸ばす間も回りの幼虫群に騒ぎがおこれば、あたふたと一緒に歩き出し、ついには高所へと移動してしまった。
 そんなわけで、結局、羽化脱皮は撮影できたものの、翅を伸ばし切るまでの撮影はできなかった。

新開 孝

訂正/不思議なミイラの正体とは!? 2006/07/03
 まず、今年の2月23日にアップした「ミイラの正体」の一部分をここにコピーしてみる。

 「以前からこの奇妙な物体が、ハナアブ科の幼虫のミイラであることには気付いていた(写真上)。」

 コピーにあるように写真上のミイラの正体を、私はハナアブ科の幼虫と断定したのである。
 しかしこれは誤りであることが先日、九州は大分県の方から御指摘いただき判明したのでここに訂正したい。

 大分県内のオニグルミ上で撮影された一枚の貴重な写真(写真下)は、このミイラの正体をあまりにも明確に語っており、これを見て私はびっくり仰天したのであった!

 なんと、なんと!!ハナアブ幼虫の呼吸突起とばかり思い込んでいた部分は、スズメガ類幼虫のお尻の突起の一部であったのだ。
 そして、あらためて尾脚の形態を見れば、それはあきらかにレピ(鱗翅類)のものであることもわかる。
 スズメガ幼虫の体がミイラ化して萎縮したあとも、お尻の突起部分はほとんど縮むことなく、生きていたときの長さを保っているのではないだろうか。私が見つけたミイラの突起は、長い冬を経過するうちには、自然と折れてしまったのかもしれない。あるいは別の理由があるのだろうか?
 
 今回、大分県でスズメガ幼虫のミイラ写真を撮影し、ご教示いただいた私の大先輩に、あらためてお礼を申し上げます。

 
新開 孝

小学館図鑑NEO「カブトムシ クワガタムシ」 2006/07/02(お知らせ)
 小学館からNEO図鑑の「カブトムシ クワガタムシ」が発売された。

 本書の特徴はいろいろあるが、コガネムシやハナムグリなどを含むコガネムシ上科全体までを扱っている。したがって、これまでクワガタやカブトムシに偏って嵌っていた子供達のなかから、コガネムシやハナムグリにも広く興味を示す子らが増えてくれることを期待したい。

 今回、私は本書の全ての標本撮影を担当させていただいた。撮影に取りかかったのは実に一昨年の12月からだが、冬場を利用して短期集中型の出張撮影を数回に渡って行なった。場所は群馬県、前橋市。
 前橋は県庁所在地ではあるが、新幹線もお隣の高崎市が停車駅とあって、なんとも寂しい街という印象が強かった。県庁だけは飛び抜けてでっかい高層ビルであり、県内のほとんどの場所から眺望できそうだ。
 夜のネオン街に出歩いてみれば、呼び込みのお兄ちゃんはやたらといても、お客の歩く姿はほんとうに稀であった。不思議な光景ではあったが、魚の美味しい居酒屋を紹介してもらったおかげで、一日、一日の疲れを癒すことができて助かった。

 撮影はデジタルカメラを使ったので、撮影結果は現場でほぼ確認できたし、何といっても都内のラボまで往復する必要もなかったので、とても効率的な仕事ができた。
 ただし、撮影結果をモニターに表示したものと、標本実物を並べて比較すれば、写真で厳密に色を再現することの難しさを改めて感じた。なおかつ、そのデジタルデータをCMYK変換しての4色印刷製版の段階を経れば、さらに色再現は困難を極める。それでも、刷り上がった本書を開いてみれば、かなりよく発色できたなあ、と私個人としては感心している。

 標本写真以外にも生態写真の撮りおろしではいろいろと苦労したり、新しい発見があったりと、初めて経験することも多かった。また様々な方達との出会いもあったおかげで、この図鑑の仕事はより想い出深いものとなった。 
 その辺の撮影記はいずれまた紹介できるのではないか、と思う。

 新開 孝

「切り取り線」 2006/07/02(その1)
 ヤマノイモの葉っぱに波形の「切り取り線」を見つけた。

 葉っぱの縁2カ所から始まって2本の切り取り線は互いにぶつかる手前で留まっている。したがって、その切り取られなかった部分を折り目として、切り取り線の内側をぺろんと左右どちらかへ折り返せば、そこはサンドイッチ状態となる。
 そのサンドイッチの具になっているのは、ダイミョウセセリの幼虫である。

 ヤマノイモにこうして作られたダイミョウセセリの幼虫巣は、幼虫の成長に伴い変化する。写真の巣は、ほぼ熟令期のものだが、もっと若い幼虫の巣での切り取り線はストレートな切り取り方で、写真のように波打ってはいない。

 幼虫の体が大きく成長すると、当然ながらその体を納める巣のサイズも大きくする必要がある。ヤマノイモの葉っぱは薄くて柔らかいので、大きい断片にした場合には、構造的に弱い。
 幼虫巣の造りはいたって簡単で、二枚に折り返した屋根の部分の縁を数カ所、糸で綴っているだけだ。
 このとき屋根の縁を波形にしておけば、単調な曲線よりかは構造的な強度が得られるのではないか、と想像している。そしてその強度に助けられて、糸での綴り留めも数カ所に施すだけで済ますことができているのではないか。

 ダイミョウセセリの幼虫巣には、建材の節約と建築作業の効率化、という少なくとも2点の工夫があるのではないか、と思った。
 新開 孝

アケビコノハの若い幼虫 2006/07/02(その2)
 アケビの蔓が、空堀川遊歩道の林側のフェンスに絡んでいる。
 春先には紫色の怪しい雰囲気をした花を咲かせるアケビは、あちこちでよく見かける。その理由は、アケビの実を食べた鳥が落とした種子でもって、いろんな場所で萌芽する機会を与えられているからだろう。

 それはともかく、フェンスの脇をふと歩き過ぎようとして、黒い小さな、小さな芋虫が目に入った。
 しかもその静止した姿の、体の折り曲げ具合は、いかにも見慣れた芋虫ではないか。

 つい2週間ほど前に愛用のルーペ(志賀昆虫社で購入)を紛失してしまい、こういうときにはたいへん困っている。現場では、その小さな芋虫はただの真っ黒にしか見えなかったが、持ち帰って拡大撮影してみると、すでに幼虫の体にはちゃんと眼玉模様がついていたのである。

 ルーペを一個買うだけで、渋谷の志賀昆虫社まで出向くわけにもいかない。近場では池袋のハンズあたりかもしれないが、手頃なルーペがあるだろうか?それにしても、池袋までの往復だけでも1時間半以上かかる。しばらくはルーペ無しでフィールドを歩くしかない。よく考えてみれば、これまでにもルーペは2回紛失しており、ようやく長いストラップを採用してからは、ずいぶんと長持ちしていたのだが、、、。
 新開 孝

ゴマダラカミキリ 2006/07/01(その1)
 近所の生け垣のカラタチでは、このところ毎日のようにゴマダラカミキリに会える。

 いつも2、3匹のゴマダラカミキリがカラタチの茎をかじっている。茎の表面はかじられて白い食痕となっているので、新しい食痕を探していけばそこで必ずゴマダラカミキリが見つかる。

 カミキリムシと言えば、私が子供の頃にはこのゴマダラカミキリが一番身近で親しみ深かった。

 このカミキリムシはいずれ丁寧に撮影してみたいと考えているが、今日は少しテスト撮影をしてみた。飛翔シーンなどは、やはり野外で撮影した方がいい。
 

 新開 孝

負傷したキカマキリモドキ 2006/07/01(その2)
 一昨日に埼玉県、飯能市で見つけたキカマキリモドキ(写真上)。

 このキカマキリモドキはメスだったので、卵を撮影したくて飼育してみることにした。
 捕まえたときには気付かなかったが、今日あらためて見てみると、左の前脚が腿節の途中から欠如していた(写真下)。その切断部分は黒く変色している。

 キカマキリモドキは、他の昆虫などを捕らえて食べる肉食性だが、それでもあらゆる危険に常にさらされていることには変わりないであろう。どういった事件が起こって大事な前脚の片方を失ったのかは、想像しようもない。

 しかし、このキカマキリモドキは右前脚だけでも獲物をがっしりと捕り押さえて、もりもりと食事をしている。
 
 
新開 孝

イワタセイボウ 2006/06/30(その1)
 ヒメジョオンの花でメタリックな輝きの小さなハチを見つけた。
 体長は8ミリ程度。

 お尻から見ると、赤い腹部がよく目立つ(写真上)。

 顔を正面から見れば、これまた綺麗な金緑色(写真中)。

セイボウの仲間にはこうしてお花畑で出会うことができるが、彼女らは寄生バチであって、その生活の真相を覗き見ることはかなり難しい。



新開 孝

対岸の火事!? 2006/06/30(その2)
 エゴツルクビオトシブミのオスが、胸はって威張っている(?)ところへ、オオイシアブが獲物を捕らえて、すぐ後ろへやって来た。


 その瞬間、私はエゴツルクビオトシブミは逃げ去るだろうと思ったのが、意外にも、そのまままったく動じることなく、じっと同じ姿勢を保っていたのである。
これには少し驚いた。

 エゴツルクビオトシブミも運が悪ければ、いつオオイシアブの餌食になってもおかしくない。新開 孝

白髪太郎 2006/06/29(その1)
 草やぶでクスサンの真新しい繭を見つけた。

 網目状の繭内にはまだ幼虫の姿を見ることができたから、その繭が紡がれて日が浅いことはすぐに知れた。
 だとすれば、まだ近くに幼虫「白髪太郎」がいるに違いない、そう思って探してみたところ、近くのヌルデが食樹であろうと思われた。しかしヌルデの高い梢をいくら眺めても、食痕はあっても幼虫の姿はなかった。

 幼虫探索を諦めて少し山道を進むと、目の前を「白髪太郎」がゆったりと歩いていた。
クスサンの幼虫たちはほとんどが成熟して、繭つくりの時期に入っているようだ。
 新開 孝

ヘラクヌギカメムシ 2006/06/29(その2)
 クヌギカメムシ類は、秋冷のころにクヌギやコナラにオス、メスがやって来て交尾や産卵をすることで、よく知られている。

 しかし、5月ころに羽化して成虫になったあとは、どこともなく分散して、永い放浪生活に入るようだ。

 今日は埼玉県、飯能市の天覧山を歩いてみたのだが、いきなり見つけたヘラクヌギカメムシを手に取ってみた。するとさっそくカメムシ特有の臭いを放った後、飛び立ってしまった。そこをすかさず、またもや手で捕らえたら、今度は私の腕の上を歩きながら、さかんに翅をはばたくのであった。
 しつこく干渉されて、このヘラクヌギカメムシは怒ったのかもしれない。

 ヘラクヌギカメムシがはばたきをしている間、ずっと臭いがしていたのは、羽ばたき旋風でもって臭いを集中的に送り出そうという戦略だったのかもしれない。新開 孝

オオカマキリの幼虫 2006/06/28(その1)
 オオカマキリの幼虫たちも、すでに体長3、4センチ程度まで成長している。みな幼虫であるから、もちろんまだ翅は生えていないが、顔つきや獲物をねらう仕草は、もう成虫となんら変わりない凄みさえ感じられる。

 さて先日、紹介したヒメカマキリモドキの食事シーンは、今日のオオカマキリの姿を見れば、そっくりであることがよくわかる。
 それぞれの顔と口元をアップで写真にすれば、「そっくり」ということが印象付けられるが、しかし、これはあくまでも撮影上の「切り取り」による効果が大きい。

 実際に野外でヒメカマキリモドキに遭遇したとすると、その姿、外観から受ける素直な印象とは、多くの場合じつは「カマキリ」ではない。

 ヒメカマキリモドキは、うんと近づいて虫眼鏡の力を借りて覗いてみれば、それは「カマキリ」なのだが、原寸大で見れば、ほんとうは「ホソアシナガバチ」そっくりと表現した方が良いのかもしれない。

新開 孝
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