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仕事部屋 2006/02/05
 前にも書いたことがあるが、とにかく私の仕事部屋は、6畳間一部屋であり、人様から見れば、こんなものが昆虫写真家の仕事部屋なのか!?と驚愕されてもいっこうにおかしくない。

 どこをどういじっても、作業スペースを確保するのは至難の業に近いものがあるが、ここ数日、風邪で寝込んだこともあって、部屋の整理をしてみた。
 本日の写真は、その6畳間の一角、アナログな机上作業をするスペースである。左画面に写っている今年のカレンダーは海野和男さんの「昆虫たちの世界」。私が尊敬する昆虫写真家、といえば今さら言うまでもない、海野和男さん。カレンダーは2部購入して、海野さんファンと称する知り合いのライターの方にプレゼントした。
 
 さて、ずいぶんと昔の話だが、私が受けた高校入試試験の国語の問題に載った、岩波新書の青版「南極越冬記」(西堀栄三郎著)の文章が記憶に鮮やかだ(長らく絶版だったが、アンコール復刊した。そういう息の長い本というものを、私も出したい!!)それがあまりにも印象的だったので、試験が終わった次の日に書店で「南極越冬記」を買い求め、一気に読み耽ったことがある。
 このての書物に関心を覚えたのも初めての経験だったかもしれないが、なかでも
「孤独の楽しみ」という章が気に入った、と記憶している。この章では、せまい越冬基地で自分にあてがわれた小部屋で、身の回りの小物を工夫して研究のアイデアを暖めるというような、そういう知の楽しみなどが語られていたと思う。で、その小部屋のモノクロ写真も掲載されていたが、私はそういう、まるで一畳一部屋みたいな空間で、孤独ながらも夢想に耽るという幸せな時間に共感を憶えた。
  
 私の仕事部屋も、まさに南極越冬隊(第一次のころだが、、)の個人部屋に相当するほど狭く窮屈だ。しかし、ここでの仕事もあと2年も満たない。ゆとり空間にも憧れるが、こういう自分好みの空間もじっくり味わいおさめておきたいと思う。
 
( E-500 魚眼8ミリ ストロボFL-50使用)新開 孝

武蔵野台地と雑木林 2006/02/04
 かつて足田輝一さんが武蔵野の自然を綴った文章、あるいは書物そして写真の数々は、四国の田舎で生まれ育った私を関東の地へ誘うきっかけのひとつになった。

 振り返ってみれば松山から今の東京に上京して、今年で23年目。
 いろいろあったけれど、ともかくこの関東の地を離れる日を意識し始めると、もう残された時間はあまりにも少ないことに気付いた。

 ここ数日、天井を眺めている時間が続くとなおさら、いらぬことから、差し迫ったことから、なにからなにまで想いが巡る。私のような自由業という身分は、勤め人のストレスやら辛さなどとは縁遠いが、病気といえど床に伏している時間は、堪え難いほどに不安の津波が次々と押し寄せ、まんじりともできないことが少なくない。

 さて実は、本日はようやく風邪のほうもおさまりつつあるなか、丸一日かけて、狭きわが仕事部屋を整理しがてら、今年の撮影スケジュールの大幅な見直しをした。ずいぶんと昔に手を染めてから放り出していた撮影の仕事を、今年のうちに完遂しようと決めたのである。それは風景写真であり、機材もかつて使用していたブローニー版にこだわってみようと思う。久しぶりにPENTAX645に電池を入れて、シャッター音を聞いてみた。するとちゃんと作動してくれた。
 
(OLYMPUS E-300 14-54ズームレンズ)
 新開 孝

セイヨウカラシナ 2006/02/02
 昼過ぎまでは陽射しがあったのに、やがてどんよりと曇ってしまった。

 ベランダの外の草地にはセイヨウカラシナの根生葉があちこちに目立つ。これは秋に芽生えたものが成長してそのまま冬越ししている姿だろう。一見、ダイコンやカブの葉っぱそっくりだ。
 こういう秋に芽生えて苗の状態で冬ごしし、春になって花を咲かす植物を越年草とか二年草と呼ぶ。今年も4月ころには根生葉の間からニョキニョキと茎が立ち上がり、黄色い花をにぎやかに咲かせてくれるに違いない。
 去年の春、ベランダの外で繁茂したこのセイヨウカラシナでは多数のツマキチョウが育った。ベランダから手を伸ばせば次々と幼虫がつまめるし、餌の補充もたいへん楽だった。
 しかし、こうして青々と葉を茂らせるセイヨウカラシナの姿をあらためて見ていると、もうすぐ春なのだなあ、と感じる。
 
( Nikon D200 18-200ミリズーム)


『皆越ようせいさんのトークセッション』

 「土の中の小さな生きものたち」というタイトルのトークセッションは池袋淳久堂で今夜行なわれる。皆越ようせいさんのお話を聞きたくて、出席を申し込んでいたのだが一昨日からの風邪がどうしても完治しないので、残念ながら急遽キャンセルしてしまった。
 ギリギリまで迷っていたが、這ってでも会場に行き着けたとして、人に風邪をうつす迷惑も考えれば、やはりここは断念するしかないと判断した。
 どうも今年の風邪はしつこい!

 しかし、淳久堂の7階では今月末まで写真展が開催されているそうなので、一度は書店に顔を出してみるつもりでいる。
新開 孝

はやにえ 2006/02/01
 今日は「ぐんま昆虫の森」に赴いた。

 あいにくの雨だったが、少しだけ雑木林を歩いてみた。ほどなく林縁でモズの「はやにえ」となったツチイナゴが見つかった。
 ツチイナゴの体に損傷は少なく、まだ死後硬直もあまり進んでいないから、モズに捕らえられたのはここ2、3日内だろう。

 昆虫観察館に戻ってみると矢島稔園長さんがいらっしゃったので、このツチイナゴのはやにえを枝ごとお見せして、はやにえのお話を少しした。
 矢島さんがおっしゃるには、近頃「はやにえ」と聞いても何のことだが知らない人が増えたということであった。「もはや、はやにえと言う言葉は死語なんだね!」というお言葉が強く印象に残った。

(Nikon D200 18-200ミリズーム+クローズアップレンズ)
 

 さて、今月なかばに予定されている「ぐんま昆虫の森」での私の講演についての打ち合わせが今日の目的だったが、天気さえ良ければもっと虫探しをするつもりでいた。しかし、悪いことに私は一昨日から風邪をひき、昨日は一日寝込んでいた。今日も体が不調なまま運転をしたため、家に戻ってからダウン。
 
 だが、明晩には池袋のジュンク堂で皆越ようせいさんのトークセッションがある。這ってでもお話を聞きにいきたい!いや絶対に行きますよ!新開 孝

シロオビ?クロバネ? 2006/01/30
 でっぷりと肥えたフユシャクのメス(写真上)は、シロオビフユシャクであろうか?お尻にたっぷりと生えた毛束が灰色だとシロオビだそうだ。

 しかし、これによく似た同属(Alsophila)のクロバネフユシャクとの区別には注意が必要。お尻の毛束が黒色だとクロバネということだが、灰色と黒色というのは見る条件によっては非常に境界が曖昧になる。
 このところよく見かけるオス(写真下)の方もシロかクロか、多数の標本をきちんと見ておかないと図鑑だけで見分けるのは難しそうだ。

 それにしてもこのAlsophila属のメスは、海獣のトドのごとくでっぷりとした体型。体内にはぎっしりと卵が詰まっているのであろう。
 産卵はこれからだが、シジュウカラなど鳥の捕食の脅威にさらされるのではないだろうか。鳥から見ればいかにも旨そうであるに違いない。

(Nikon D200 45ミリ+中間リング)

新開 孝

フユシャクのメス「イチモジフユナミシャク」 2006/01/29
 昨夜はフユシャクの交尾を撮影したので、今日は昼間にメスの産卵行動を見てみようと思った。

 残念ながら産卵中のメスは見つからなかったが、産卵を終えて痩せたウスバフユシャクのメスを2匹、そして写真のイチモジフユナミシャクのメスを見ることができた。

 イチモジフユナミシャクのメスは、フユシャクの仲間としては大きな翅をもっている。もちろんこのはねは飛翔には役立たないのだが、完全に退化せずにこうして中途半端な大きさを残しているところが何とも不思議に感じる。

 今日は他に、羽化直後のシロフフユエダシャクのオスを見つけた。昨夜、交尾を撮影したばかりだが、本種の発生時期としては早いほうではないだろうか。

(Nikon D200 マイクロニッコール105ミリ )新開 孝

シロフフユエダシャクの交尾 2006/01/28
 今夜は、近所の「化け山」の雑木林にフユシャクを見に行ってみた。

 冷たい北風のため体感温度はぐんと下がって、かなり寒い夜だ。しかし、雑木林の中を歩くうちに、フユシャクのオスの姿があちこちで見つかった。なかにはクモに捕われてしまったオスもいる。

 林内の歩道柵の上で今にも離陸しようとしていたのは、シロフフユエダシャクのオスだった(写真上)。しかし、風が強めなのでなかなかうまく飛び立てないでいる。
 その近くのコナラの幹では、交尾中のシロフフユエダシャクのカップルがいた。交尾の場所の高さは1メートル70センチ程度。メスが上向きになっている(写真中)。
 メスの体にはほんのわずか、はねの痕跡が見られる。お腹には卵がぎっしり詰まって膨らんでいるのがよくわかる。

 他にもウスバフユシャクだろうか?別種の交尾つがいが見つかったが(イヌシデ幹上)、地上高2メートル以上の場所だったので、撮影はできなかった。

 冬の夜に雑木林へ出向けば、こうしてフユシャク類の交尾を簡単に観察できる。

(Nikon D200 マイクロニッコール105ミリ )新開 孝

危うし!ツマキチョウ越冬蛹 2006/01/27
 空堀川沿いの柵で以前に見つけてあったツマキチョウ越冬蛹の一つが、ぶらん、と写真のごとく垂れ下がっていた。

 蛹の胸部を支えていた帯糸が完全に切れてしまったのである。こういう災難もいずれ被ることもあるだろう、とは予想していたがその通りになってしまった。

(Nikon D200 18-200ズームレンズ使用)

新開 孝

田中 博さんの新刊本! 2006/01/25(その2)
当ホームでもリンクしているHP「トンボと花のギャラリー」の田中博さんが「あなたも撮れるきれいな花写真」という写真本を学研から出版なさった。
 本書では銀塩フィルムとデジタル写真とが使われているが、特にデジタルデータはOLYMPUSのEシステムで撮影されたものであるそうだ。その印刷製版の仕上がり具合がとても気になるが、とりあえずは書店で見てみたいものである。
 私はやたらと忙しく、まだ書店に行く時間もないのが残念!新開 孝

コミミズク幼虫、緑色タイプ 2006/01/25(その1)
コナラの梢などでよく見つかるコミミズク幼虫の体色は様々であり、少なくとも私が見てきた範囲では4通りほどある。

 今日、見つけた個体はうす緑色タイプ。静止している枝色からすれば、隠蔽擬態としての効果は低いように感じる。実際にはどの体色タイプが一番多いのだろうか、興味深い。

(E-500 35ミリマクロ+1.4倍テレコン使用)新開 孝

見落としていた!越冬幼虫たち 2006/01/24
 先日1/21にアップしたゴマダラチョウ越冬幼虫の場所を再び覗いてみた。今日は午後の便で松山から東京に戻るので、今一度、幼虫たちの様子を見ておこうと思ったのである。

 すると、先日の観察では見落としていた幼虫が次々と見つかり、自分の観察眼も鈍ったなあ、と軽いショックすら受けたのであった。

 まず、エノキと並んで建っている二つの石碑には、あらたに5匹もの幼虫が見つかった(写真中、下)。さらに石碑脇のムクノキの幹上にも1匹(写真下)。
 つまり整理すると、まずエノキの樹上越冬組は確認できた範囲で10匹。
そして石碑上越冬組は7匹、ムクノキ幹上越冬は1匹、という具合である。

 もちろん地面に積もった落ち葉も調べてみた。するとここでも多数の越冬幼虫が見つかっている。狭い範囲の数本のエノキだが、昨年の9月から10月にかけてゴマダラチョウの母蝶たちががかなりの数、産卵したようである。
 ゴマダラチョウ幼虫は、通常なら地面の落ち葉下を越冬場所に選ぶはずだが、中にはこのように陽射しに晒された地面から離れた高所を選んだものもいたのである。
新開 孝

四国のクモガタガガンボ 2006/01/22
 今回、松山にやって来た目的の一つは、クモガタガガンボの撮影であった。

 このクモガタガガンボの仲間には日本全国に広く分布している種がいて、四国の山地でもある程度標高のある場所へ行けば、そう珍しくはないようだ。
 「雪虫」の一種としてよく知られているクモガタガガンボだが、その風変わりな形態には以前から惹かれるものがあった。しかもその生態についてはほとんど未知のままであり、少しでもその生態解明のヒントになるような観察もしてみたいと思っていた。

 ある方から一年前に貴重な情報をいただき、その方の案内で雪積もる愛媛山中に赴いた(写真上)。道中ほとんどが除雪されていて、雪道はわずかであったが、目的地手前2キロの細道は完全に凍結しており、ノーマルタイアだと四輪駆動でない限り走行は無理であった。
 さて、今回の撮影現場とはかつて私も数回通ったことのあるよく知った場所である。しかしながらこれまで、当ポイントがクモガタガガンボと関係濃いことはまったく想像すらできなかったのである。
 実は去年の3月にも当地を訪れているが、クモガタガガンボの発生時期は終わっていて、撮影はできなかった。
 結論から言えば、写真のごとく、私の念願叶ってクモガタガガンボを初めて目にして、撮影もできた(写真のクモガタ方ガガンボはオス)。最初に発見できた個体は、一瞬、まさにクモそっくりであり、体長も小さいことから半信半疑であった(クモガタガガンボは体長の個体差が極めて大きいことも初めて知った)。首にかけていた16倍ルーペを取り出し、その姿を覗いたときの興奮は久々のもの。これぞ珍虫ぞなもし!

 今回の撮影場所の詳細などは、とりあえず伏せておきたい。この虫の生態解明にはまだまだ時間が必要なのである。おそらくは、このような昆虫の生活の謎を解明しようという者は、今の日本には皆無に違いない。特に昆虫学の専門家には相手にされない。また多くの虫屋にも期待はできないことも付け加えておこう。

(E−500 魚眼8ミリ・マクロ35ミリ使用)新開 孝

タテジマカミキリ 2006/01/21(その2)
 松山市のお隣、伊予市でタテジマカミキリを探してみた。私の実家から車で10分とかからぬフィールドだが、15年ぶりとあって最初は道を間違えてしまった。

 迷ったあげくにたどり着いた神社の林。その照葉樹林の中を歩きながら、カクレミノの木を見ていくと、やがて成虫越冬するタテジマカミキリに出会うことができた。

 本種は、カクレミノの細い枝に抱きついたままの格好で越冬している。その際、枝の表面をえぐるようにかじり堀って、そこへ体を埋めるようにしているところが凄いぞなもし!
新開 孝

ゴマダラチョウの樹上越冬組 2006/01/21(その1)
 松山の実家すぐそばにあるエノキでゴマダラチョウ越冬幼虫を見つけた。
 まず最初の一匹目は目線の高さにいたので、すぐにも発見できた(写真上/ハラビロカマキリの卵のうに寄り添っている)のだが、さらに2匹、3匹目と同じエノキの幹上で次々と越冬組が追加された。結局、高い場所の幼虫も含めて、総勢9匹の幼虫が樹上越冬していたのである。さすがにこれには驚いた。(白いものはカイガラムシの一種)
 さらに驚いたことには、エノキのそばに立つ石碑表面でも2匹の幼虫がいた(写真下)。

 9匹の幼虫が樹上越冬していたエノキの根元を見れば、ほとんど落ち葉がない。9匹のうち1匹は地面近くの幹表面に止まっていることからも、多くの幼虫たちが樹上越冬している理由を推測してみた。
 おそらく、この幼虫たちのほとんどは、最初は落ち葉の下に潜り込んでいたのではないか。それが強風などによって落ち葉の層が薄くなり、越冬場所としては安定を欠いたので、仕方なく樹上へ避難したのではないだろうか?

 石碑のひとつにはヨコヅナサシガメの越冬集団が二組ある。ヨコヅナサシガメは暖かい日には集団から離れて狩りに徘徊するので、石碑の上はもちろんのこと、樹上越冬するゴマダラ幼虫にとっては、脅威となるに違いない。

(E-500 8ミリ魚眼、35ミリマクロ使用) 
新開 孝
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