ニシキキンカメムシ

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絶版になったも同然の『里山昆虫ガイドブック』。(4月から絶版扱いとなる。)

短命ではあったが、この本には思い入れも多い。
昆虫写真家としての初期のころの写真がいっぱい詰まっている。

そして写真原版の99%以上が銀塩ポジフィルムだったことでも、
かつての懐かしいフィルムカメラの時代が詰まっているとも言える。

『里山昆虫ガイドブック』にはコラム頁に、ニシキキンカメムシの記事と写真を載せている。

じつはニシキキンカメムシの写真を掲載した印刷物としては、2002年の1月に発行した
偕成社の自然観察事典シリーズ『カメムシ観察事典』のほうが先である。
この『カメムシ観察事典』ではニシキキンカメムシの羽化連続シーンの写真を使用している。

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ニシキキンカメムシは、いわゆる珍虫という部類に入る。

滅多にはお目にかかれない虫だ。
私もこのキンカメムシを撮影できるまでには、かなりの年月を費やした。

撮影を開始した当時は、インターネットなどから得る情報など皆無だった。
今の時代はその点、情報が溢れ、どんな憧れの虫にも容易く出遭える時代となった。

まさに飽食の時代の下で、特定の生きものとの出会いも贅沢を極めることができる。
はたして、その贅沢がほんとうに豊かな精神と通じていくのか、はなはだ疑問ではある。

ま、私の僻みではあろうか。

ひねくれた性格の私は、まずは自分の目と足に頼る。
他人に尋ねるのは潔しとしない。

回り道とわかっていても、その過程を踏むことは、自分にとっての貴重な財産となる。
と、いつも自分に言い聞かせてきた。

他人と関わることが煩わしいというのも本音だろう。
私は小さい頃からたいへん人見知りするタイプだった。
今は歳とったせいか、性格もだいぶ変わったようだ。

さて、『カメムシ観察事典』に使っている羽化連続写真を撮影したのは、
1995年の5月3日。ゴールデンウィークの晴天日だった。

私が初めてニシキキンカメムシと出遭うことができたのは、遡って1992年の12月。
真冬の越冬幼虫を探し当てたのだった。
いきなり越冬幼虫を探しに出掛けたくらいだから、私のニシキキンカメムシに対する憧れ度は相当なものだったのだろう。

しかも、ニシキキンカメムシの越冬幼虫がどんな姿をしているのか、
私は知らなかったし、当時、巷に公表された写真などもなかったと思う。

だから、落ち葉をめくって初めて見るニシキキンカメムシの幼虫(終令)の姿に接したとき、私の胸は激しく鼓動し興奮の絶頂に達したのであった。

「これが!ニシキキンカメムシの幼虫かあ~!!」

思わず私は叫んでいた。はたから見れば、気が狂ったオッサンにしか見えまい(当時33歳)。

落ち葉にへばりついていた幼虫は、まさに宝石のごとく光輝いていた。
その記念すべき写真は、『里山昆虫ガイドブック』の90ページに載っている。
写真の原板はエクタクローム64だった。

1993年、こんどはニシキキンカメムシの発生シーズンに再び産地を訪れ、
成虫の交尾や吸汁行動、産卵などを撮影している。
そのときの交尾写真が92-93ページ見開きの写真。
写真原版はフジのベルビア50。

当時、それまで主に使ってきたコダクローム64(PKR)から、
しだいにフジのフジクローム50、プロビア、ベルビアなどへと移行し始めた頃だった。

ここに本で使った写真を掲示できれば良いのだろうが、
ポジフィルムからのスキャニングが今はうまくできない。
以前はけっこうまともなデータをスキャニングできていたのだが、
何かのはずみでドライバー設定をいじってから、どうしようもなく、酷いデータとなってしまう。
ポジからおこした印刷の仕上がりの美しさには到底、適わない。

『里山昆虫ガイドブック』はもう入手困難なので、興味ある方は古本屋でも探してみて欲しい。

結局、本書は初版4000部。そして初年度内に2刷りを2000部、発行した。

合計、約6000部が世に出たわけだが、書店で売れ残っては出版社に戻ってくる部数も、
このところは数少なくなっているようだ。

私は今の50歳にして、一つの節目を迎えたような気がしてならない。

悪性腫瘍に関わる手術、そして過去に出した出版本の絶版。
こじつければキリがないが、一昨年からの宮崎での生活を振り返っても、

私の昆虫を通して見つめる自然への思いそのものにも大きな変化を感じている。

生きている以上、変化はつきものだ。
変わらぬものなど、私の中にいかほど残っているのだろうか?

さいごに、ニシキキンカメムシの九州における産地だが、
私の住む三股町に近いところでは、霧島山に過去の記録がある。
あとは福岡県の古処山(こしょざん)などがよく知られた産地のようだ。

九州圏内にはもっと数多くの産地があるかと思われるが、おそらくどの産地でも
個体数はそれほど多くはないようだ。




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