2015年7月アーカイブ


今日は全国で、猛暑だったようだ。その中、日陰のまったくない北九州、平尾台の草原を歩いた。
平尾台P7310025_1.jpgシシウドの花に来るセイヨウミツバチや、アカスジカメムシなどを眺めていると、少しは気持ちも和むが、暑いことには変わりがない。ジャノメチョウも草の合間を縫うように飛翔する姿が多かった。ほとんどが、♀を探し求める♂であった。無理はするなよ、と自分に言い聞かせ、水分はこまめに摂った。

さて、こうしてわざわざ平尾台のフィールドを歩いているのも、そのきっかけは、自然写真家の武田晋一さんが、6年前にこの場所を案内してくれたことにある。そう、もう6年も経ってしまった。
生き物との出会いには、いろいろなきっかけがある。武田さんが私に伝えたかった場所に、私も興味を抱いたのであるが、そうやって素直に好奇心のなすままに行動した結果、思わぬ昆虫に出会えた。探しても滅多には見つからない、極めて稀な昆虫にひょっこり出会えてしまったことが、武田さんと一緒に訪れた鍾乳洞の雰囲気とともに、強烈に焼き付いて残った。その残像を頭に描きながら、慎重に歩いてみたのだが、今日のところは成果無しで終わった。まあ、惨敗ということだ。

さてさて、武田晋一さんの新著「カタツムリハンドブック」。実用的図鑑にしては表紙が写真絵本のようで可愛い。
カタツムリ.JPG
撮影の裏側の事情など、コラムがいっぱいあって、私はそのコラムを一気に読んでしまった。それは苦労話だけではなく、カタツムリの生態をわかりやすく語ってくれてもいる。だいぶ前から本書を作るために全国を行脚し、カタツムリを追い求めていることを聞いていはいたが、実際にどういった苦労や工夫や、あるいはいろんな人との出会いがあったか、ということも改めてよくわかった。
つくづく思うのだが、武田晋一さんは、生き物好きには違いないが、それ以上に人が好きなんだあ、と感じる。いろんな人の人格に触れたがり、そしてとことん惚れ込む人なんだなあ、と。

シシウドP7310029_1.jpgともかく、暑かった!  帰りは高速で大渋滞にはまった。1時間ほどノロノロ運転。こんな渋滞は東京で暮らしていた頃からして、8年ぶりのこと。 宮崎ならこんな渋滞、有り得ない。まあだからこそ、宮崎を選んだのだけど。

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福岡県久留米市高良山

薄暗い林内に白い帯が浮かび上がっていた。
コガタコガネグモIMG_5445.jpgコガタコガネグモの帯糸。


2003年4月に発行した「里山蝶ガイドブック」(TBSブリタニカ)は全く不人気で売れずじまい。初版で絶版となった。この写真本はフィルム時代の最後の仕事になった。数点だけ、デジタル写真も載せたけれど、当時はまだ、デザイナーさんから「デジタル写真は極力入れないで!」と釘を刺されていた。まだまだ印刷業界ではデジタル写真を受け入れてなかったのである。

売れない本を作った反省も大いにしたが、同時にこうした自然書が日本の市場では受け入れられないことも、よくわかった。「里山昆虫ガイドブック」「里山蝶ガイドブック」の2冊を出したあと、一般向けの自然書を作ることは自己満足に過ぎず、仕事にはならないので、止める決意をした。あれからもう12年。

さて、今朝のこと郵便局に出掛ける間際、目の前の花壇にクロアゲハの♂が来ていた。クロアゲハは滅多に出会えないのだからと、急いで玄関まで走り、カメラを構えた。九州南部ではモンキアゲハ、ナガサキアゲハ、カラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハが多いけれど、オナガアゲハ、クロアゲハの割合はかなり低い。
クロアゲハIMG_5367.JPG
クロアゲハIMG_5372.JPG
うしろ翅の付け根にある白い性紋もしっかり写し止めた。つまりこのクロアゲハはオスであった。
「里山蝶ガイドブック」の中に、ボロボロでも大丈夫という見開きのコラムがある。チョウというのはでっかい翅を持っているがゆえに、翅が邪魔になることもあるが、むしろ翅を犠牲にして、生き伸びている面もある。今日も、そんな逞しいチョウに出会えた。
カラスアゲハIMG_5412.JPGうしろ翅のほtんどが欠損しているが、それでも平気で飛翔していた。撮影している間は、種名すら特定できなかったが、あとから写真を拡大してみて、腹部背面にわずかに見えた金緑色から、カラスアゲハだろうと思えた。

表題にあるハチマガイスカシバは、庭のど真ん中にあるコナラの梢で再度、目撃できた。先日羽化後間近な成虫を撮影した、すぐ傍である。しかし、すばやく飛翔し、すぐに姿を見失った。
ハチマガイスカシバは、どうやら、我が家の庭で発生してるのは間違いないようである。



夏休みは楽しい。一ヶ月ものお休みは、まるで永遠のごとき解放感を得たようなものだ。私はかつてその解放感に酔いしれ、そして夏休み最終の一週間に地獄を見た。「なんでこんな宿題やらんと、いかんの!」と、大人のムチを罵った。

さて、「じゅえきレストラン」(ポプラ社)という拙著では、いくつかの樹液が舞台となっているが、なかでも一番近い場所にある、ハルニレの樹液は毎年、昆虫酒場としてたいへん賑わっていた。このハルニレには毎夏、カブト・クワガタを狙った人の出入りが多かった。しかし、今夏は樹液の出が悪く、虫たちの姿はじつに少ない。このハルニレには、スカシバ類の穿孔が明らかで、羽化殻も多く観察できていた。
樹液が枯渇した理由はよくわからない。

しかし、お一人様限定のプライベートレストラン?なら、事欠かない。小さなクヌギでも、コウモリガ幼虫が穿孔した場所では、樹液の泉が湧いているのである。それもあちこちに店舗がひしめいている。
ノコギリクワガタ♂IMG_5252.JPG地上高、45センチの樹液酒場カウンタには、ノコギリクワガタが悠々と居座っていた。
そのすぐ隣の酒場では、カブトムシのペアがハネムーン中。
カブトムシIMG_5290.JPG前にも書いたが、例年より、カブト、クワガタの数が多い。


〜お知らせ〜

2008年の夏から、三股町で毎年、8月のお盆頃に開催してきた写真展ですが、今夏は開催致しません。
私の仕事上の理由からですが、もしかしたら11月中に開催できるかどうか、只今検討中です。年内に開催できるかどうかは、決まり次第、またご案内致します。

樹液レストランは連日、大賑わいだ。

この賑わいを眺めて楽しんでいるのは、人間だけではない。楽しいかどうかは知らないが、旨そうだなあ、と狙っている輩がいる。カマキリやカエルもそうだが、もっとも手強いのが、カラスだ。
でっかいノコギリクワガタやカブトムシが、内蔵だけ喰われて惨めな残骸として、路上に転がる光景は珍しくない。その犯人が、カラスだとわかってはいても、現場を見るのは難しい。カラスはとても用心深いからだ。しかし、今日はちょっとしたタイミングで、カラスの狩りを一部だけだが、見ることができた。ハシボソガラスが、でっかいカブトムシ♂をくわえとり、私の仕事部屋の屋根に持ち去ったのである。何度も雨樋に落としては、くわえ直していた。

カラス701A3468.JPG
カラスにとって、カブトムシやクワガタムシは、貴重なタンパク源の餌なのである。「人間なんかに採られてたまるか」、なんて声が聞こえてきそうだ。

写真は、かなりトリミングしています。

※当初、ハシボソガラスとしていましたが、友人に問い合わせたところ「ハシブトでは」との指摘をいただき、庭に出入るするカラスをよくよく観察してみた結果、やはりハシブトガラス、と断定しました。
ここに訂正いたします。

台風12号の影響で断続的に雨が降り、西風も少し強め。
しかし、庭の花壇やイヌザンショウの花には昆虫たちがひっきりなしに来ていた。夏型は少ないミカドアゲハが、訪花しているのを食堂の窓から見た。黄紋型だった。すぐにカメラを引っさげて外に出たが、折しも雨脚が強まったばかり。しかし、チョウたちは平気で吸蜜している。雨脚が弱まったところで駆け寄ってみた。
ミカドアゲハ701A3147.JPGミカドアゲハは結局、この一頭が一度訪れただけだが、アオスジアゲハは4、5頭がほとんど常にいるほどの賑わい。
アオスジアゲハ701A3224.JPG
イヌザンショウには、イシガケチョウ、アオバセセリ、カラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハ、ヒメウラナミジャノメ、スジグロシロチョウ、ナミアゲハ、も来ていた。ナミアゲハは吸蜜だけでなく、産卵を何度も繰り返していた。

イヌザンショウのすぐ傍にある、クヌギ樹液を覗いてみれば、クロコムラサキ♀が来ていた。南九州では多いらしいが、私は初めての出会い。翅はだいぶ傷んでいた。「おお、これがクロコムラサキかあ!」
クロコムラサキ♀701A3195.JPG
さて、クヌギ樹液のうち観察し易い木は庭にある2本。その2本とも、昨年、事情あって幹の途中から伐採している。西側にあるクヌギはこちら。写真は昨日、撮影したもの。
クヌギIMG_5093.JPG昆虫たちの集まりは、ここ数年の中では種類数も個体数も良いほうだと感じる。昨日の親分は、ヒラタクワガタの♂だった。一番良い場所を独占しており、しつこいカナブンに腹を立てたか、いきなりカナブンの前脚を大アゴで挟み持ち上げるという場面もあった。
樹液701A3110.JPG宙に浮き上がったカナブンはうしろ翅をはばたかせ、もがいていたら、ようやく解放された。

昆虫たちの顔ぶれも、数も申し分ないのであるが、いやそうとも言い切れない。その理由とは、一昨年からの傾向なのだが、スズメバチ類、とりわけオオスズメバチが夏場にほとんど、いや全くといっていい程、やって来ない。春先、女王バチは何度か見かけているが、その後、パッタリと姿を見せない。
オオスズメバチの樹液レストランでの役割は大きい。もちろん、彼女らは樹液を独占することも多いが、樹液が滲み出る孔を、強靭な大アゴで咬み削って拡張工事を行う、という点では多くの昆虫達にとって結果的には有り難い存在なのである。今ある樹液レストランは、どれも間口が狭いため、食事を堪能できる昆虫の数には制限があり、それゆえの闘争も多い。

私の敷地周辺ではオオスズメバチが減っているのではないか?その原因として、思いつくのは「ハチ採り」による採集圧。地元では「ハチ採り」が毎年熱心に行われ、町外からも数組の採集人が入り、いわゆる「ハチ採り」の激戦区でもある。もっとも、その「ハチ採り」のおじちゃん達も首をかしげる。「ほんと、すくのうなった」と。おじちゃん達の長年の経験からしても、オオスズメバチがなぜ減ってしまったのかは謎のようだ。採り過ぎで減った、とは考えられないようだ。昔からずっと「ハチ採り」は続けてこられたからだ。採ったから減ったではなく、別の要因があるとしたら、何であろうか?この問題は真剣に突き詰めてみる必要を強く感じる。  オオスズメバチは、なぜ減ったのか?いや、ほんとうに減ったのか?も含めて


昨晩、ミヤマカラスアゲハ♀、カラスアゲハ♀、モンキアゲハ、アゲハがねぐらにつくのを見た。犬の散歩コースには、アゲハ類のねぐら街道とも呼べる場所がある。
今朝のこと、昨晩には見なかった、オナガアゲハがまだねぐらに留まっていた。他のチョウ達はみな飛び去っていたが、このオナガアゲハはまだ寝足りないようだった。
オナガアゲハIMG_5076.JPGオナガアゲハのねぐら姿は、初めて見たのだが、かなり新鮮個体だった。前翅と後ろ翅のコントラストがじつにいい。

庭のキンカン、花は終盤となりどんどん、散り始めた。訪花する昆虫は数多くいたが、それを狙っている昆虫もいる。派手な色模様をした翅がクモの糸にぶら下がっていた。
ベニイカリモンガ翅IMG_5009.JPG
ベニイカリモンガ701A3112.JPGどうやら、私の不在中に、ベニイカリモンガもキンカンの花に来ていたようだ。


延岡市

黒いアゲハ類の中でも、案外、クロアゲハは見かけない。宮崎に来てからの8年間、ほとんど見ていないが、今朝は久しぶりに出会えた。
クロアゲハ701A3042.JPGカノコユリに来ていたクロアゲハ。百合の橙色花粉を翅にいっぱいつけているところが、いい。まるでお化粧しているみたいだ。カノコユリには、ミヤマカラスアゲハ、カラスアゲハ、ナガサキアゲハ、モンキアゲハ、アカタテハ、クロセセリなども来ていた。

昨日、カブトムシの♀が来ていたソテツの雄花を覗いてみると、なんとオス3頭、メス2頭が陣取っていた。
ソテツかぶと701A2901.JPG写真画面の裏側にも雌雄が2頭がいて、花の一部に孔を穿って頭を突っ込んでいた。カブトムシみんな酔いしれているようであった。まさに「カブトムシ酒場」。他の虫は一切、来ていないのも不思議ではある。お客さんは、カブトムシに限定という、超高級酒場なのだ。

今日は早めに自宅へと戻った。
キンカンの花にはミヤマカラスアゲハ、カラスアゲハ、アオスジアゲハ、クロセセリ、コチャバネセセリが来ていたが、嫁さんが曰くには、昨日、私が留守にしている間、キンカンに来ていたアゲハ類はさらに数を増し、それはそれは盛大な吸蜜パーティーだったそうだ。


ソテツの雄花は、高さが50cmほどにそびえ立つ。
ソテツIMG_4700.jpg
雄花からなにやら妖しい香りが漂っていた。クンクンと顔を近づけていたら、先客を発見。
カブトムシ♀IMG_4664.jpg
香りはね、樹液のアルコール発酵のようでもあるし、これがきつくなったら、ドリンアンかな、という感じ。

雨の中、キンカンの莟が開いた。雨脚が弱まると、次々にチョウが飛来する。
キンカンIMG_2194.JPG
午後4時半までに飛来したチョウは、モンキアゲハ、カラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハ、ナガサキアゲハ、オナガアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、スジグロシロチョウ、コチャバネセセリ、アオバセセリ、クロセセリ、ツマグロヒョウモン、イシガケチョウ、ルリシジミ、そして蝶以外では、トラマルハナバチ、ニホンミツバチ、オオハキリバチ、アオハナムグリ、ヒメカマキリの姿があった。

アオバセセリ。
アオバセセリ701A2562.JPG
イシガケチョウ。
イシガケチョウ701A2524.JPG
クロセセリの口吻は長い。
クロセセリ701A2849.JPG
キンカンの花園のすぐ傍にあるクヌギ樹液には、ゴマダラチョウ3頭、コムラサキ、そしてスミナガシが来ていた。
スミナガシIMG_4396.JPG
今夜から、県北に移動。雨続きだが、明日の午後からは晴れそうだ。

梅雨明けしたにも関わらず、今日は朝から雨、雨、雨、、、、、。気温は25〜26度C。
さすがに「もう雨はいいよ!」と、つぶやきたくなる。いや、すでにつぶやくどころか、叫んでいる!
庭の花壇では、ハナトラノオが開花し始めた。午後3時頃、雨が止むと、カラスアゲハやモンキアゲハ、ナガサキアゲハが次々とやって来た。
ハナトラノオIMG_4256.JPGキンカンの花では、ナガサキアゲハの2令幼虫が食事中。
ナガサキアゲハ幼虫IMG_1975.JPG葉っぱ喰うのは大目に見ているけれど、「オイオイ、花は止めて欲しいなあ。キンカン、食べたいのだから。」
天候が回復すれば、一気に開花しそうな、キンカンの花蕾み。 
ナガサキアゲハIMG_1965.JPG
写真: EOS-M3  + 55-200mmズーム  18-55mmズーム

我が家のクヌギで、比較的観察し易い樹液レストランは3カ所。この3カ所以外で一番集まりのいい、繁盛している樹液レストランは、10メートルほどの高所にあり、双眼鏡で観察するしかない。
今年の傾向としては、ノコギリクワガタがやたらと多い。3カ所のレストランを合わせると、毎日、ほぼ7〜8ペアは見られる。今朝の顔ぶれはヒラタクワガタ♂、カナブン、カブトムシ♀、ミヤマカミキリ♂、ゴマダラチョウ、、など。ヒメスズメバチも来たが、ヒラタにすぐ追い払われてしまった。
樹液レストラン今朝701A2507.JPG先週、梅雨明けした17日、別のレストランの様子はこちら。ノコギリクワガタが毎日、来ている。
樹影レストランIMG_1790.JPG顔ぶれとしては寂しいが、ゴマダラチョウが花を添えてくれる。ここに黄色いスズメバチ、緑色のアオカナブン、そしてカブトムシの♂、あとスミナガシも入れば、もちろん申し分ない。しかし、役者がそこまで揃う舞台は、滅多に見られない。残念ながらオオムラサキは、宮崎県内では深山のチョウであり、平地林には生息していない。

今朝のこと、庭のゴーヤの葉に、ハチマガイスカシバがいた。初めて見るスカシバだ。
ハチマガイスカシバIMG_4169.JPG
羽化直後なのか、とても綺麗な姿で、翅の赤い鱗粉模様が鮮やか。図鑑の標本写真では、この部分の色が出ていない。本種は成虫、幼虫ともに生態が不明らしい。写真の個体は我が家の敷地内で育ったのだろうか?

『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』 永幡嘉之 :写真・文(岩崎書店)

原発事故.jpg永幡嘉之さんの東日本大震災に関わる著作は、「巨大津波は生態系をどう変えたか」(講談社ブルーバックス:2012年)、「大津波のあとの生きものたち」(少年写真新聞社:2015年)、に続く三作目となった。こうした単行本だけでなく、雑誌や各誌に精力的に発表して今日に至っており、これからも大津波、原発事故が自然界に及ぼした影響について、永幡さんの調査・分析は続くかと思う。
 風評被害を恐れるあまりに、事実から目を逸らしたり、自然のことを真剣に理解する努力に背を向けるといった、日本社会にはそういう一面も強くある。そういう逆風のなかで、生き物の調査・研究を続け、声を発することはかなりの精神力も必要であろう。

永幡さんと初めて会ったのは、都内のある集まりであったが、私がしたたか酔う前に、お話ができて良かったと思う。後日、永幡さんから、ブナ属とロシア極東の自然のテーマについて書かれた「日本海の向こう側」という新聞連載記事のコピーを送っていただいた。さらに「月刊むし」に投稿された記事の別刷りもたくさん送ってくださり、分厚い「永幡ファイル」がファイルケースの引き出しに納まっている。もちろん全て目を通している。おそらく永幡さんが発表された記事の一部ではあろうかと思うが、そのファイルや傑作として評価の高い『白畑孝太郎〜ある野の昆虫学者の生涯』(無明舎)など、仕事ぶりから窺える、生物学者としての優れた才能、素晴らしい文才、そして繊細な写真表現力は、これからもますます活躍の場を広げていくことだろう。
初めて東京でお会いしたときは挨拶だけだったが、その後2005年の6月、私は山形県米沢市に赴き、三日間に渡り永幡さんのフィールドを案内していただいた。小学館のネオ図鑑に載せるコルリクワガタの生態写真を撮影するのが目的だったが、極めて条件の良いポイントを案内してくれて、撮影は予想以上の成果を上げることができた。移動する車中、あるいは夜の居酒屋で熱く語る永幡さんとご一緒できた時間は大変有意義で、印象深く、今でもときおり思い出す。

頂き物

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本日、南九州地方は梅雨明けとなった。朝から清々しい風が流れ、空気もカラッとして気持ちがいい。
霧島山IMG_1759.JPG大気は澄んでいて、遠景がくっきり見える。霧島山の山容も久々に拝むことができた。

道を隔てたお隣の梅林にエノキの大木が2本ある。そのうち一本は根元が複雑に分かれており、一部は枯死している。2年前の秋、枯死した幹から、ヒラアシキバチの羽化を多数、観察できた。
今日のこと、地主の方が草刈りに来られていたので、少しお話をした。なるほど、枯死したエノキは地主の方が根元の樹皮剥離をしたせいであった。
私:「この枯れたエノキ、もらってもいいですか?」
地主:「ああ、ええよ、エノキ、全部持っていってよ」
まあ、貰い受けるとしても、チェンソーで切断せぬことにはどうにもならない。「あげるよ」とお墨付きをえたので、近いうちに切断作業をしようかと思う。
エノキIMG_1768.JPG

このエノキには、アケビとノブドウの蔓が絡んでいる。地主の方が路上に転がっていたタマムシを拾い上げて、私にくれた。
「箪笥に入れておいたら、着物が増えるよ」

トノサマバッタ

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午後6時半。谷津田の道を犬と歩いた。さすがにこの時刻だと涼しい。小道の足下にトノサマバタが佇んでいた。
IMG_4025.JPG人の気配には敏感なトノサマバッタだが、路面に腹這いになり近寄ることができた。
お腹からは、昼間の酷暑がじんわりと舞い戻ってきた。


南九州では台風11号の影響で、風が強かったが、快晴で気温も高め。しかし、湿度は60〜70%程度で過ごし易かった。台風の直撃は免れた。
トノサマバッタIMG_4027.JPG




蛾を嫌う人は多いが、そういう人達でもオオミズアオの人気は高い。
オオミズアオ♂IMG_3347.JPG今朝、庭にいたオオミズアオの♂。翅は傷んでいるが、羽化してから数日内かと思える。
好きか、嫌いかの違いには、おそらくあまり根拠など無いと思う。嫌いな訳を語る人もいるが、ほんとうの嫌いな理由などあるのだろうか?好きか、嫌いかは、瞬時に決まるものかと思う。だから、嫌いが、いきなり好きになったり、一旦好きになったにも関わらず、すぐにまた嫌いになることもある。
蛾は嫌いだけど、蝶は好き、という人も、ほんとうは蛾のことをよく知らない人だと、私は思っている。翻って、虫が嫌いの人も蛾が嫌いな人も同じことかと思うが、嫌いという気持ちは、対象物を理解しようという気持ちを制御している結果ではないかとも思う。理解するには努力が必要だが、生きていく上でどこにエネルギーを注ぐべきかは人それぞれかなり頑固に決まっており、努力をするべきではない、と判断したとき、嫌いだから、というのはじつにわかりやすい口実になる。生きていく上で余計なストレスを避けるための本能とで言えるだろうか。もちろん、嫌いという価値観は無意識のうちに社会という場で生じる。物事を相対的に観て、自分の感性に沿って、理解しようとすることは、案外難しい。人は社会という影響下にあり、そこから逃れることはできず、いつのまにか社会から操作されていることが多い。

と、いつもと違ったことを書きながら、私はやはり思う。じゃあ、私にとって嫌いな生き物がいるか、と問われれば、その答えはかなり難しい。ちょい気持ち悪いな、という生き物はいても、嫌い、とまでは言えないだろう。これはすごくグロテスクだなあ、と感じても、逆になんでこんなデザインになったのだろう?と、むしろ興味を持ってしまう。二者択一というのは判り易いが、なかなか落ち着かない。

地面に落ちていたサネカズラ(ビナンカズラ)の花。

ビナンカズラの落花IMG_3399.JPG


夏日に突然の雨

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濃い霧の朝だったが、やがて青空となった。グングン、気温も上がった。それでも、ここ南九州より東日本、東北地方の方がもっと酷暑になったようだ。夏空IMG_1594.JPG
午後2時過ぎ、それまでの夏空が一変して雲に覆われ、激しいにわか雨となった。1時間近く降って止んだら、また夏空に戻った。

昔、東京に住んでいた頃、池袋の空は広いよね、という印象があった。池袋駅の西口がとくにそうだった。都会のなかでも空を広く見渡せると、救われたような気がしたものだ。しかし、それも20年前くらいの話。今では西口を出た途端、空は狭くなった。ビルの谷底である。

午後6時過ぎ、すぐ近所の草薮で、ナガサキアゲハの♂がねぐらについていた。
ナガサキアゲハ♂IMG_3332.JPG翅はもうボロボロになっている。このナガサキアゲハのオスは、何匹のメスと出会えたであろうか?
思わず「お疲れさん」と声を掛けたくなった。

( 写真上:EOS-M3 +18-35ミリズーム、 写真下:EOS-70D +EF-s60ミリマクロ  )




アカメガシワは荒れ地にすぐさま入り込む、じつに逞しい植物だ。種子から芽生えてからの成長は極めて速い。庭のあちこちにニョキニョキ生えては、グングン成長してくれるので、場所によっては伐採せざるを得ない。切っても切っても、すぐに萌芽するのだが。

今年の2月、庭の通り道にアカメガシワが育ち、いくらなんでも邪魔なので、伐採した。すると、うっかり気付かなかったが、コウモリガの小さな幼虫が巣くっていたようだ。ポロリと地面に転がった、幼虫。コウモリガ幼虫は生木の内部にトンネルを穿ってそこで成長する。元に戻すこともできないので、どうしようかと迷ったが、ある文献を調べていたら、「ジャガイモで飼育可能」とあった。
そこでさっそく、ジャガイモにコルクボーラーを使ってトンネルを穿ち、幼虫を入れてみた。幼虫は水を得た魚のごとく、トンネルの奥にスルリと納まった。

飼育を始めてから五ヶ月。忘れかけていたジャガイモを覗くと、ボロボロになっていた。
もう幼虫はダメか、と思ったが意外にも元気だったので、新しいジャガイモに引っ越しをした。
コウモリガ飼育P7130071.jpg
穴の中に、幼虫の頭が見えている。
koumoriga.jpg幼虫の体に合わせてトンネルを穿つ道具は、コルクボーラーがいい。

コウモリガ飼育P7130001.jpg先端は鋸のような歯になっている。これを回転させて、トンネルを掘る。
コウモリガ飼育P7130009.jpgちなみに、ジャガイモ飼育のことを知った文献とは、保育社の「原色日本蛾類幼虫図鑑(下)」
で、本書は神田の古書店「明倫館書店」で買い求めた。昭和62年、1987年の8刷発行で、著者の検印まである。当時でも4500円。かなり高価な図鑑だ。古書店ではいくらで買ったのか、もう憶えていない。


庭のクロガネモチで育っていたシンジュサン幼虫3匹は、今朝になって3匹とも繭作りを終えていた。
シンジュサンっ繭IMG_2828.JPG
シンジュサンの繭は、一枚の葉っぱを舟形にして紡がれる。乾燥して固まると、かなり堅い繭となる。
この繭から成虫が羽化するのは8月〜9月になる。

同じクロガネモチの、トビモンオオエダシャク幼虫。今日は葉っぱを食べていたが、動いた距離は自分の体長より短いようだ。
トビモンオオエダシャク喰うIMG_2809.JPG
さて、特別小さな被写体(10ミリ以下)を撮影するときは、、OLYMPUSのマイクロフォーサーズが活躍する。特にカメラのLVブースト機能は、LED懐中電灯の明るさでも充分にフォーカス合わせできるので、助かる。LED懐中電灯を保持する台は自作品。これを「お馬さん」と呼んでいる。
ライトスタンドIMG_2936.JPG自由雲台のパーツは、所沢市の郊外で違法投棄されていたゴミの中から拾ったもの。新品同様だったが、カーナビのモニター固定用の雲台だったのだろう。支持台のお馬さんは、ホームセンターで買った端材を加工したもの(50円)。前脚だけ蹄付き(ゴム製)。これは寸法を間違えたので、補正しただけのことだが、滑り止めになる。こうした「お馬さん」やあるいは「お猿さんの手」など、小道具は撮影の必要性に応じて自作する。手元にあるジャンク箱の中から、あれこれ工作のアイデアを練るのも、楽しい一時だ。撮影本番に入る前に、こうした工作に1時間〜数時間、あるいは二日掛り、という場合も珍しくない。ただし、パーツの買い出しに町まで出掛ける時間は厳しいので、ホームセンターに行けるときは、できるだけあれこれと買いだめしておく。


今朝のこと、クヌギ材置き場ではタイワンオオテントウダマシが大宴会で盛り上がっていた。
ざっと見て目に入る数は全部で20匹あまり。
タイワンオオテントウダマシ群れIMG_2711.JPG6匹の成虫に、幼虫一匹も混じる場面も。皆、朽ち木表面の菌類を忙しく食べている。


さて、トリカルネットを使ったまぶしの改良型を一昨日紹介したが、竹の芯棒を園芸用のポール(径15ミり)にした第二号も作っている。竹はたまたま部屋に転がっていたので使ってみた。しかし園芸用ポールは表面に凸凹があって、ネットの絡みつきがさらにしっかりするので、ちょうどいい。百円ショップで購入。
まぶし2号IMG_1592.JPG園芸用ポールは、トリカルネットまぶしの長さに合わせて、鋸で切断する。このポールは薄い鋼鉄のパイプをビニールコーティングしたもので、軽い。まぶしの改良型を工夫してはみたものの、当分の間、おカイコ様の飼育予定はない。トリカルネットは山のようにあるので、まぶしの増産は可能だが、これで商売するわけでもなく、次なる改良型をそのうち工夫してみたい。


クヌギ材置き場。このクヌギは昨年の2月に伐採したもの。
南九州のこの地方では、クヌギ林があちこちにあるが、
ほとんどがシイタケ栽培用で10年前後で
伐採更新される。したがって樹齢を経た大きな「お化けクヌギ」は滅多に見かけない。
樹液レストランとなるクヌギはそう多くはなく、ハルニレがそれを補っている。
我が家の林には、樹齢50年近いクヌギが3本ある。あるが、そのおかげか電波障害が甚だしく、
梅雨時の今は、民放テレビのUMK一局しか映らない。
話が逸れたが、ともかく樹高を詰める作業をしたくても、かなり高度な職人さんでないと、対処できないかと思う。高所作業車が入れないからだ。
タイワンオオテトウダマシIMG_2700.JPGさて、今朝のこと、このクヌギ材置き場で、タイワンオオテントウダマシ成虫が5匹、写真画面に納まった。これはかなり稀なこと。
タイワンオオテントウダマシIMG_2689.JPG多いときには12匹を数えることもあるが、大抵は分散して活動している。たまに2匹が寄り添うようにして
食事をしていることもあるが、接近すると頭突きをしたりして、排他的でもある。まだ配偶行動は見ていない。どうやら、新成虫の発生ピークのようだが、一時減ってしまった幼虫も、若いステージのものがちらほら、姿を見せるようになった。年に何回発生するのか、よくわからない。

キマワリとのツーショットは、こちら。
タイワンオオテントウダマシIMG_2698.JPG
庭のクロガネモチで育っていた、シンジュサン3匹のうち、一匹は繭作りを終えていた。そして同じ木にいた、トビモンオオエダシャク幼虫は、さして移動もせず、ずっと同じ場所で哲学中。
トビモンオオエダシャク幼虫IMG_2701.JPG「我思う、ゆえに我あり」  昆虫も、思うところがあるのではないか。なぜに動かぬ?と案じている私など、彼から見れば、不思議に見えているのかもしれない。


まぶし改

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カイコの繭作りに使う、まぶしは、昔の格子型のものではなく、もっと扱い易い新しい形のものが開発されている。そのまぶしを、九州大学大学院農学研究院遺伝子資源開発研究センターで拝見したのは、昨年の秋。しかし、そのまぶしは特注品ですでに製造する業者が無いそうだ。
私は見学しながら、これならホームセンターで入手できる素材で、類似のまぶしを自作できると思った。実際、すでにそういうことは考案されていた。

日本大学生物資源科学部植物資源科学科応用昆虫学研究室で、研究、考案されたものが、園芸用資材トリカルネットを加工したものだった。参照文献は、

園芸用資材を活用した波形蔟の考案蚕糸・昆虫バイオテック 80(3)、243-245(2011)

さっそく私もトリカルネットを取寄せて同じものを作ってみた。ただし、使ってみて、トリカルネットが柔らかくしなること、折り目が緩んでくることから、改良してみた。改良といっても簡単なことで、竹棒を両端に芯として通しただけ。

これでしなることなく、まぶしの移動の際、扱い易くなった。

まぶし改IMG_1578.JPG

山折谷折りしたトリカルネットを、両端の竹棒の芯2本でがっちり支えている。
これを野菜収穫ネットにいれて完成。軽い。
まぶし改IMG_1583.JPG
熟蚕を次々とこの中に入れてやれば、それぞれ落ち着いた場所で繭作りする。
おしっこをするので新聞紙を厚めに敷いた上に平に置く。

「ぜんぶわかるカイコ」(ポプラ社)に掲載した写真では、この竹棒の芯を入れるという
改良点は入っていない。じつは、本が出来上がってから、撮影道具の片付けをしていて、
ふと思いついたのであった。

今日も30度を超える夏日。いきなり暑くなって、体調を崩しそうだ。
しかし、昆虫たちは今の時期、元気に活動している。
大きなクモを狩る、ベッコウクモバチ。コガネグモもこのクモには適わない。
クモバチIMG_2606.JPG
少し山に入ると(青井岳)一面雲に覆われ、小雨が降っていたし平地でもあちこちで、
にわか雨があった。
ヒメハルゼミの大合唱、そして背後からはアカショウビンの涼しげな囀りを聞きながら、
今日もヤブカンゾウの群落の傍を通った。
野萱草IMG_2616.JPG





ヤブカンゾウ

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昼過ぎまで不安定な天候で、陽射しが出たかと思えばすぐにどんより曇って雨が降り出す、ということを繰り返していた。気温は高く、室内では30度を超えていて、外に出ているとじっとしていても汗が滴り落ちた。  が、午後2時過ぎ、いきなり夏空となり晴天。なんじゃこりゃあ!?

ヤブカンゾウIMG_2437.JPG
ヤブカンゾウの群落が、畦に沿って続いていた。なかなか見事であった。

夕餉は久々に、天ぷら。天ぷらを揚げることは26歳頃、池上のアパート暮らしで憶えたが、腕を上げたのは結婚して、東村山市に移転してからだった。この続きは長くなるので、省略します。

※ 当初、植物種名を「ノカンゾウ」としていましたが、読者のから「ヤブカンゾウ」では、との
ご指摘をいただき、訂正しました。ご指摘いただいた方に、感謝致します。
たしかに、ヤブカンゾウは八重咲きの花です。
 ノカンゾウとヤブカンゾウの取り違えと同様に、以前からカラムシとイラクサをときどき取り違えて
しまうことがあって、講演のときにご指摘いただいたこともありました。どうも、思い違いがちょくちょく
あります。


梅雨の中休み

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しばらくぶりに雨が止んで、アスファルトの路面が白く乾いた。わずか数分間だけだったが、陽射しもあった。この時期としてはまだ低めだが、気温も上がった。ノブドウの花には、それっ!!と、ばかりにアオスジアゲハが次々と飛来して、蜜を吸っていた。
アオスジアゲハ701A1462.JPG5匹以上は来ていたが、カメラ構える私のすぐ目の前でもまったく警戒心がない。皆、腹ぺこなんだろうなあ。
夕方、隣のウメ林でねぐらについた、アゲハの夏型メスがいた。羽化してまだ間もないのだろう、翅はどこも擦れていない。
アゲハ夏型IMG_2306.JPG1時間ほどして、再び見に行ったら、翅を閉じていた。                             「お休みなさい」

止まない雨。庭のあちこちに水たまりができる。庭に出るにも、長靴を履く。
水たまりP7060001.jpg雨樋の水を貯める貯水タンクも、これではとっくに満タン。いや本当に設置したいとは思っているが、でっかいタンクは結構なお値段がする。でもやはり設置しようか、などと迷っているうちに梅雨も終わるのだろう。ホームセンターでチラッと見たタンクは何リットルだったか(200L)、かなりでかい容量で、2万円を超えていた。

コオニユリの花をあちこちで、見かける。「あれ!こんなところにも」と草むらに隠れていたコオニユリを覗き込んでみれば、ヤブキリのオスがいた。
ヤブキリ♂P7060018.jpg
花粉を食べていたのだろうか?  ヤブキリは他の昆虫を捕らえて食べる、肉食である。肉食だがときにはサラダもいただく。

雨の日に、OLYMPUSのコンデジ TG-3が大活躍する。今はより進化したTG-4が登場したが、TG-3でも十分、使える。TG-3を買ってしまった自分としては、ひねくれて、TG-5を待ちたい気持ちが強い。ああ、しかし、キリが無い。新製品を気にしていたら。

雨に濡れても

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誰かが書いてたと思うが、「人には、虫が好きか、嫌いかの二通りしかない」と。それを裏付けるのが例えばイモムシかと思う。イモムシは嫌われる代表格だが、逆にイモムシ大好きという方もかなり多い。いや、ちょっとだけ多い。虫は好きだけど、イモムシだけは苦手という方もいるので、話は少し複雑になるが、私自身、中学生までイモムシは苦手だった。しかし、私は中学2年生のとき、理科の宿題で点数稼ぎをしたいという下心で、アゲハの幼虫を飼育した。おっかなびっくりで、イモムシを割り箸で摘んだりしていたが、飼っているうちに馴染んでしまった。「なんだ、イモムシって別にどうってことないじゃない。葉っぱ食べている姿は可愛いくらいだなあ」  と嫌いが好きへと逆転した。何事も経験を積むべしですね。

さて、今朝も雨。庭のクロガネモチにいたシンジュサン幼虫8匹は、今朝の段階で3匹となった。見落としがないかしつこく眺めていたら、でっかいトビモンオオエダシャク幼虫がいた。本種は尺取り虫の中でも横綱級の大きさ。
トビモンオオエダシャク幼虫P7050124.jpgクヌギ材置き場では、タイワンオオテントウダマシが食事中。
タイワンオオテントウダマシP7050161_1.jpg忙しげに口を動かし、おそらく菌類でしょう、バクバク食っていた。
しつこい雨も、夕方には小休止。そこで犬と散歩に出かけてみると、セグロベニトゲアシガが多数いた。それならばと、ネザサの葉裏をめくってみれば、ササコナフキツノアブラムシのコロニーが無数にあって、ゴイシシジミ幼虫が何匹も見つかった。
ゴイシシジミ幼虫P7050212.jpg真新しい蛹も一個あった。ゴイシシジミの成虫もアブラムシの甘露を吸いに来ていた。
ゴイシシジミP7050196.jpg散歩とは言え、気になる場所では10分以上足が止まる。すると飼い犬チョロも先に行きたくて「クウン,クウン」と催促鳴きする。気がつけば一時間近く散歩していた。

庭に戻ると、クロガネモチにいたトビモンオオエダシャク幼虫の体は、すっかり乾いていた。
トビモンオオエダシャク幼虫P7050306.jpgでも、ということは、今日一日中そこでじっと動かずにいたということだ。クヌギのヤママユ幼虫も右に同じ。生き物として、できるだけエネルギーを無駄に使わないことは大事だ、という教訓を得た気がする。休め、日本人よ!


梅雨はまだまだ続く。昨日は蒸し暑かったが、今日は長袖シャツでも肌寒いほど気温が低い。こんな天気では農作物にも影響が出るだろう。
庭のイヌビワでは、イシガケチョウの若齢幼虫が雨に濡れていた。
イシガケチョウ幼虫P7040030.jpgクヌギの梢では、オオフタモンウバタマコメツキがうづくまっていた。
オオフタモンウバタマコメツキP7040035.jpgオオフタモンウバタマコメツキは、灯火によくやって来るが、それ以外では朽ち木上で見かける。こうして緑の葉上で見るのは初めてである。

さて、このところ飼育で使い始めたケースは、おにぎりケース。100円で10個と安い上に軽いので、吊り下げ式飼育にはちょうどいい。今日はクヌギで見つけたアカスジアオリンガ幼虫が新たに入居。
アカスジアオリンガP7040019.jpgしばらくして「カッタン、コトン!」という、糞が落っこちたときの音がはっきりと聞こえた。なるほど、このケースは音も響き易いわけで、幼虫の健康状態を耳で確認できるのがいい。

水ものは、ケースを水平にしてゆりかご吊りとする。これなら、水漏れしない。
アカスジアオリンガP7040021.jpg本の仕事で必要な写真を得るために、飼育する昆虫も増えてきた。とくに今の時期が一番忙しい。
雨が降ろうが止もうが、忙しさに変わりはない。こうしてデスクのすぐ背後に吊るしておけば、うっかり忘れることもないかと思う。

写真は全て、OLYMPUS TG-3。

昆虫写真家、尾園暁さんの「しぜん 8月号とんぼ」(キンダーブック:フレーベル館)。
とんぼ.JPG
児童向けの冊子とは言え、トンボのことをあまり知らない方にとっては、大人でも大変勉強になる一冊。写真はどれも素晴らしいので、ついつい惹き込まれるだろう。「あれ?トンボって、こんなに綺麗だったの」
ギンヤンマが主人公となっているが、国内には200種ほどのトンボがいる。他にどんなトンボがいるのか、きちんと解説もあります。

昆虫少年(少女)が、今や絶滅の時代に入った。それは昆虫との出会いが暮らしの中で無いからである。自然環境があまりにも貧弱になったことが大きいが、それと並行して、大人が、子供の好奇心を潰しているのも事実だ。心豊かな大人がそもそも、絶滅寸前かもしれない。
そんな時代だからこそ、こうした冊子を読む機会を、子供達に与えて欲しい。


国内のテントウダマシ科の中でも、最大クラスのタイワンオオテントウダマシ(体長12ミリ)。
我が家のクヌギ材では幼虫が多数育っていて、今朝のこと、新成虫も現れた。
雨の中、撮影。
タイワンオオテントウダマシIMG_1949.JPG
本種は、幼虫も成虫も朽ち木に生える菌類を主食とする。危険を感じると、何とも言えない芳香を放つ。私には「朝鮮人参」の香りと思える。タイワントビナナフシも全く同じ臭いを放つ。これを嗅いだある方は「ニンニク醤油」の香りと評されました。


都城市、神柱公園で編集者の方と寸暇の自然観察。クヌギやケヤキの幹上には、ヨコバイの一種の幼虫が多数見つかった。体長は2ミリ程度。
ヨコバイSP幼虫P7010007_1.JPG写真はOLYMPUSのTG-3の顕微鏡モードで撮影。内蔵ストロボ使用。この倍率でも深度合成を使えればいいのだが、と思う。深度合成は倍率が高い(5倍以上)撮影でこそ、威力を発揮する。

深度合成撮影はかなり普及してきたが、このテクニックをきちんと追求し、素晴らしい成果を上げている方がいる。山形県在住の、昆虫写真家、高嶋清明さんだ。高嶋さんが開発した手法が、SSP(自然科学写真協会)のホームページで紹介されている。興味ある方は、是非ご覧ください。高倍率撮影と深度合成の組み合わせで、夢のような画像を創出できるわけです。





見納め

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仕事部屋のすぐ北側にある、クヌギ。午前6時半。
ヤママユ幼虫は次々と繭を紡ぎ、残るは一頭のみとなった。見落としがあるかもしれないが、ともかくこれで、幼虫のお姿を拝めるのもあと1日くらいだろうか。  デカイ!!
ヤママユP7010022.jpg
一番最初の繭は三日目を迎え、シュウ酸カルシウムの白い粉を纏っていた。
ヤママユ繭P7010015.jpg写真は、OLYMPUS  TG-3を使用。 上画面は、深度合成撮影。