| 所沢市、狭山湖の東にある『トトロの森』を歩いてみた。 オオタカのメスの甲高い鳴き声が朝の谷間に響く。上昇気流に乗ってゆっくり旋回するオオタカのオスは白く輝いていた。地上に立つ点粒のような私の姿も彼らの視界にはきっちり捉えられているのだろうなあ、そんなことを考えながら茶畑の脇の道をゆっくり歩く。シロハラがけたたましくさえずりながら林へと飛び去った。そのうしろをぴったりモズが追いかけていく姿も見える。鳥たちの姿、声を目にし耳にしていると冬の静けさをずんと感じる。 コナラの梢をていねいに見ていくと、ここでもヤママユの卵がよく見つかる。 ヤママユの卵は大きいのと数個以上がかたまりで産みつけられているので、探し易い。しかし今日のお目当てはヤママユの卵ではない。コナラやクヌギの冬芽にいるゾウムシの一種だ。 芽がしっかりとしていて、そして何より手の届く高さの梢をあちこちと訪ねて回る。それにしても見覚えのあるコナラの木がずいぶんと切られてしまった。どれもシロスジカミキリの幼虫が材にトンネルを穿ち、枯れかけていたのだから仕方がない。夏には樹液酒場となっていたコナラだが、この数年集まる昆虫たちの顔ぶれには寂しいものがあった。 さて、正午近くになってようやくお目当ての「アカコブコブゾウムシ」が見つかった(写真上、下)。コナラの冬芽のそばに抱きつくような格好でじっとしている。「コブコブ」とコブが2回繰り返す名前の由来を知らないが、想像するに前翅の隆起の数に注目した命名であろうか。 保育社の原色日本甲虫図鑑(4)を開いてみると、わずか一行の解説文の最後に「シイの実」とある。なんだかそっけない記述だが、アカコブコブゾウムシはシイ類の実を加害するのであろう。私は冬以外の季節に活動する本種の姿をまだ見たことがない。
(EOS-1D マーク2 MP-E65ミリ、使用) | |