| 地面の穴を塞ぐように、ハンミョウの幼虫の顔が見える(写真上)。 この幼虫は先月、仙台で採取したものだ。つまり、今もうちの部屋で飼っている。 ちなみに成虫の顔もアップしてみた。この写真(下)は夏に撮影したもの。さすがに成虫は、野外ではもう崖などの隙間に潜り込んでいるのではないかと思う。 私はこれまで「ハンミョウは成虫越冬」、という知識しかなかったので、こうして今でも幼虫のままでいることに少し驚いた。 そこで調べてみると、夏に孵化した幼虫はとりあえずは越冬し、翌年も順調に餌を食べることができたら夏頃(つまり1年目)に羽化できるそうだ。もし餌を充分得ることができなければ、幼虫は成長できずさらに翌年以降の夏へ羽化が持ち越しとなる。 縦穴に籠って地面を通り過ぎる獲物を待ち伏せするのであるから、餌にありつけるかどうかは、巣を構えた場所の善し悪しにも大きく左右されるわけである。 したがってハンミョウの幼虫は飢えにはやたらめったら強い。2ヶ月間位は絶食に耐えるそうだ。
『ハンミョウは確かに減った』
昆虫の生活サイクルを、実際に自分の目で確かめるのはほんとうに根気を要する仕事だ。 昆虫に限らず、生き物の生態を克明に知りたいと思ったとき、そこには様々な障害があったり、膨大な時間を必要とするのが常である。 現代に生きる人々は、膨大な情報を簡単に入手できるためなのか、自らの込み上げてくる情熱でもって、生き物の生態をとことん追い掛けてみようというエネルギッシュな人など、ほんとうに稀になってしまったようだ。 私はハンミョウというさして珍しくもない昆虫について、しかしながらほとんど自らの観察にもとづく知識を持っていないことに、今日あらためて驚愕した。 ただそれには少しだけ言い訳をしてもいいと思っている。 つまりハンミョウは、この関東地方、いや全国の里山環境において、かつてほどの繁栄はしておらず減少傾向にあるということだ。 東京都内にも生息地があるが、それはいたって局地的である。 ハンミョウなどは本来、どこにでもいる人里の馴染み深い昆虫の代表格ではなかったか。 私が幼少の頃は、わんさかと這い回るこのハンミョウに、感激する暇もなく踏みつぶす遊びに興じていたくらいだ。 さすがにすばしこいハンミョウのこと、いつも逃げられてしまったが。
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