| 下新井の林とハラビロカマキリのメス 2003/11/18 | | 所沢市下新井の雑木林に初めて訪れたのは15年前になる。当時はまだ不法投棄もほとんどなく、広大な平地林は平穏な濃い自然にあふれていた。四国に産まれ育った私が憧れていた、ゆるやかなスロープとそこにどこまでも続く落葉樹林という風景があったのである。広い空には電線も無く、テレビドラマのロケもしばしば行われていたりした。私はこの林に毎日のように通い続け、私にとっての大事なフィールドになっていった。畑で働く農家の方とも親しくなった。それから数年してここもどんどん様子が変ってしまった。てっとりばやく言えば荒廃した。とどめはつい最近の広大な清掃工場と林を大きく分断する自動車道の建設であった。そのような今では全国どこにでもある里山の自然衰退に伴いここ数年この林を訪れる回数はほんとうに数えるほどとなった。 今日はしかし久しぶりに出向いてみた。前回来たのはは7月末の雑誌の取材を受けた時だから、今年に入ってわずか2回目ということになる。今日の目的は私がお気に入りだったクリ林で、ちょうど今頃が羽化時期のウスタビガを探すことである。繭にぶらさがったウスタビガを撮影しようというわけであるが、これがいかに困難か、私はよく知っている。以前に『ウスタビガ撮影記』という記事をある雑誌でも書いたのだが、この晩秋に現われる蛾の魅力に私は一時期のめり込んだのである。困難以上の苦難をさえ味わった私はそれでも3年以上の年月をかけて撮影し、あるシーンの撮影をくぎりとしてウスタビガから遠ざかったのであった。 そんな昔のことを思い出したりしながら、林をゆっくり巡ったもののやはりウスタビガは見つからなかった。生け垣のチャ(お茶)の花にはオオスズメバチやコガタスズメバチの女王が吸蜜に来て体中が黄色い花粉にまみれている。さすがにオオカマキリもよれよれという風体で、最後の産卵に漕ぎ着けるだろうか? 林の南側のクヌギの木ではハラビロカマキリのメスが日向ぼっこか、じっとしている。すでにこのカマキリの卵のうもあちこちで見かけるから、もうこのメスの寿命も先は長くないのだろう。農家のおばさんに挨拶してからカメラを構える(写真上)。 クリ林の中では、ツルウメモドキの朱色の実が、ウスタビガ探索に疲れた私の目の前にあった(写真下)。さあ、午後からは中里の林に移動だ。
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