| エントツドロバチが狩りをして戻ってくる間、私は梅の木のかたわらにうずくまっているしかなかった。幸いにしてそこは木陰であったから、炎天下の待機は我慢もできたのであるが、いささか退屈でもあった。
しかし、ときおり空中で獲物を捕らえるオニヤンマのダイナミックな飛翔や、遠くのエノキの梢に金属光沢の輝きをちらつかせるヤマトタマムシの飛翔など、いかにも心和む夏の風景が目を楽しませてくれる。 ときおり腕時計を気にしてみるなど、わずかな視線の移動のうち、梅の木の反対側に、ほっそりしたハチの姿がチラリと見えた。このハチの登場には我慢ならず、ついに私は監視の持ち場を離れて、そっと梅の木の裏側に回ってみた。
そのハチは素早く移動すると、並べ置かれた水タンクの上に伏せた板の、庇の下に潜り込んだ。私も急いで庇の下を覗き込んでみた。すると、ヒメグモの一種に飛びかかり、一瞬にして抱きかかえたルリジガバチを目の前にしたのである。
獲物を口にくわえたまま、一旦は空中に舞い上がったものの、ルリジガバチはどうにか畑の隅に積まれてあった板きれに着地して、クモをくわえ直している。 クモに飛びかかった直後に、麻酔針を急所へと正確に打ち込んだのであろう。その早業を写し止めることは、至難の技と思える。
ルリジガバチは見るからにスマートであり、洗練され尽くしたような体型には、惚れ惚れとする。そして、まさに瑠璃色の体表面は派手過ぎもせず、真夏の日射しに控えめに輝いていた。
(E-500 マクロ35ミリ+1.4倍テレコン) | |