| 晩秋のキリガ、クヌギカメムシ、他 2003/11/13 | | さて昨日アップした「キバラモクメキリガ」はキバラ、モクメ、キリガと切って読んでもらうとわかりやすい。キリガ類という蛾のグループがいて、これらは秋深まってから成虫が羽化してそのまま冬を越し、2月から3月にかけて活動する。今日もそのキリガ類の一種が見つかった。羽化したてなのか翅が新鮮だ(写真上)。「ノコメ、トガリ、キリガ」だろうか?種名については後日、再確認したい。キリガ類は冬咲くツバキやキブシの花、そして樹液にもやって来る。特に真冬の樹液に蛾が集まっているという光景を目にすると、昆虫たちの驚異的な世界にあらためて震撼する。
クヌギカメムシは昨日もアップしたばかりだが、今日も今シーズン第2号を観察できた。つまり昨日の写真が第1号だったわけである。今日の2号目が産卵していたクヌギの木は、実は今まで私がヨコヅナサシガメ幼虫を観察してきたクヌギということもあり驚いた。(残念ながらヨコヅナサシガメ幼虫たちはついに姿を消してしまったようだ。)昨日も書いたがクヌギカメムシにはもう一種ヘラクヌギカメムシというのがいて、クヌギカメムシと混棲している。近年、クヌギカメムシの方は数が減っているらしいが中里で撮影できた1号、2号ともにクヌギカメムシであった。ヘラクヌギとは非常に似ているため背面からの識別は難しいが、メスの腹部の気門を見ればいい。気門が黒ければクヌギカメムシである(写真中)。晩秋に限り、しかもゼリー状の物質に卵を包み込みながら産卵するというクヌギカメムシの習性はたいへん興味深い。その生態の詳細は拙著『珍虫の愛虫記』を参照されたい。
ゴンズイの実の中でシロジュウシホシテントウ2頭が潜んでいた(写真下)。今日はかなり寒い。こうして逆光で透かしてみると暖かい隠れ家に見える。シロジュウシホシテントウは成虫、幼虫とも菌類を食べているようだが、きちんと観察したことがない。中里の雑木林でも数が多いテントウムシだ。
ゴマダラチョウ幼虫、残る4頭のうち11/10にアップした2頭が、昨夜地上に降りたようだ。
『襟巻きトラップ』アブ幼虫(仮称「エリマキ」)の件。
問い1:まず幼虫たちは本当に襟巻きトラップ専門家なのか?という自問のもとに、その反証となるべき「エリマキ」幼虫を探してみた。つまりエノキワタアブラムシのコロニー内に鎮座してアブラムシを暴食している「エリマキ」がいるかどうかを探ってみた。 結果1:そのような幼虫は1匹も見つからなかった。 どうやら「エリマキ」は襟巻きトラップという生活戦略を常としていることは、ほぼ間違いないようだ。 それと11/11にアップしたもう1種のヒラタアブ幼虫(歩き回るので、仮に「ウオーカー」と呼ぼう)でも、襟巻き状態の姿勢をとることがわかった。しかし、「ウオーカー」の襟巻き姿勢は一時的なものであり、枝の太さも体長よりはるかに太い径でも見られる。「ウオーカー」が枝上で見つかる場合、襟巻き以外の姿勢でいることの方が多く、通常発見される場所はアブラムシコロニーの本拠地、葉の裏であることに変わりは無い。
問い2:襟巻きトラップに見られる隙間の問題。幼虫が巻き付く枝の太さを選んでいるかどうか?隙間が大きくなれば、餌捕獲効率が落ちるだろう。幼虫がこれを回避するために枝の径を自分の体長に見合ったものにしているのか否か。
結果2:幼虫自身が枝の太さを選択しているのかどうかは確認しようがないが10数例の幼虫を見た限り、枝の径と幼虫の体長差から生じる隙間が、体長を超えるほど大きい例はなかった。隙間の最長のものでも幼虫の体長の半分以下であり、隙間のせいで幼虫にとって餌捕獲効率がはなはだしく低くなるという状況は考えにくいようだ。
実はここ3日間、問い1、問い2を主軸に「エリマキ」を観察してきた。するとさらにいくつかの興味深い新しい知見、写真を得ることができた。結果2についても、もう少し詳しい観察例がある。しかし「エリマキ」の話題は重過ぎるので、その内容についてはこの『ある記』のコーナーではなく、別のあらたなるコーナーを設けそちらで扱う方がいいかもしれない。本ホームページは、まだ構成としては詰めが甘いことは承知していたのだが、年内オープンをめざしていささか見切り発車の感もあった。その点を反省しつつ、さらに改善していきたいと思う。とりあえず「エリマキ」についてのニュースは後日まとめてアップするかどうか検討中である。ただ、こうした私にとっても初体験の虫についても、リアルタイムで綴るのがスリリングで面白いと思う。少し考えさせていただくことに御了解を得たい。 | |