| 石垣島の森のどこかで私の襟首に落ちてきた幼虫。実は当初、オキナワツノトンボの幼虫だとはまったく思っていなかった。私はてっきり徘徊性ウスバカゲロウ類の一種だろうと思い込んでいたのである。幼虫の姿態は『沖縄昆虫野外図鑑』第3巻に載っているオキナワツノトンボ幼虫の写真とは別物のようであったからだ。 とにかくこの幼虫、樹上から落ちて来たことは間違い無いと考えられ、飼育するにあたって小枝をケースに入れてみた。するとしばらくして7/28に載せた写真のごとく枝又に見事に落ち着いたのである。私の推測は正しかったようだ。生きた芋虫などをケースに入れておくと、いつのまにか吸血し(写真上)、お腹がパンパンになる。つまり幼虫は枝の一部と化し、獲物を待ち伏せするという習性なのである。 ところで私は、石垣島、星野の集落はずれで見つけたオキナワツノトンボ成虫のメスも持ち帰っていた。お腹がはちきれんばかりになっていたこのメスがやがて産卵し、孵化したのである。その幼虫たち(写真中)が脱皮し、2令幼虫となったときの姿がまさに「襟首についた幼虫」そっくりであった!つまりこの時点で、ようやくオキナワツノトンボ幼虫であったことを認識できたのである。私が徘徊性ウスバカゲロウ類の幼虫でないかと思い込んだことには、もう一つ理由がある。それは前年の1月、狭山丘陵で徘徊性ウスバカゲロウの幼虫を見つけ撮影していたからである(写真下)。そもそも徘徊性のウスバカゲロウ幼虫(つまりすり鉢状の巣穴を作らないタイプ)というのは簡単に見つかるものではない。私は以前に偶然、砂地で一匹の幼虫を捕まえたことがあるくらいだ。探して見つけだすことが容易なのは、石垣や岩盤上の地位類に潜むことがわかっているコマダラウスバカゲロウ幼虫くらいではないだろうか。それがである。私が狭山丘陵で見つけた幼虫は、なんとケヤキの幹にへばりついていた!見つけてくれ!と言わんばかりである。何故そのような場所にへばりついていたのか?これまた大きな謎である。とにかく私はその幼虫の正体を突き止めるために飼育してみたのだが、残念ながら幼虫は餌をとることなくやがて死んでしまった。日本にいるウスバカゲロウ全17種のうち、幼虫が徘徊性であると判明しているものが6種。巣穴を作るタイプが4種であるから、残る7種についてはどうやらこれらも徘徊性幼虫ではないかと考えられている。 さて、石垣島で偶然にも捕らえたオキナワツノトンボ幼虫。生き餌を与えて飼育するうちに脱皮し、3令幼虫となった。おそらくこれが終令であろう。まったく動くことなく同じ枝又に同化しきっている。私が適度に餌を与えているからでもあろう。現地であれば羽化するのは来年の5月以降である。この先どうなるのであろうか? | |