マムシグサ、ふたたび

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先週、紹介した近所のマムシグサだが。

20年前に出た『植物の世界 第2号』(教育社)の中でホソバテンナンショウの生活史や、

マムシグサ類全体の詳しい生態の話を読んだことを思い出した。

読んだ当時はただでさえ奇抜な格好をした植物である上に、

さらに株の大きさによって性転換するという解説文には驚愕したのであった。

また、私が東京の多摩丘陵で撮影したことのあるマムシグサと思い込んでいた種は、

正しくはムラサキマムシグサであって、今、住んでいる九州地方の方こそ、

マムシグサであることも改めて知った。

つまり、マムシグサ類の分類に関する解説を、昔は読み落としていたようだ。

マムシグサの受粉媒介には昆虫が必要だが、

あの妖しげな仏炎苞の袋状の形態は、まさに食虫植物そのものであり、

そこへキノコバエ類などが誘引されて、吸い込まれるように飛び込んでいく。

マムシグサの雄性、雌性それぞれの花序の様子などを見ておきたくなって、

さっそく先週、訪れた場所へ行ってみた。

ところがである。  その狭い斜面の道筋は、つい今しがただろうと思うが、

草刈が為された後であった。草は綺麗になぎ倒されていた。遅かったかあ!

しかし、よく見ればマムシグサは根っこをスパッと刈り払われただけで、

無傷の姿で地面にころがっていたのである。

さっそく一つの花序を見てみたら、雄性花序であった。

W2177752.jpg
そして、その仏炎苞の合わせ目を見てみれば、なるほど虫の出口がちゃんとある。

出口の奥には、仏炎苞の中で死んだ虫の脚先が見えるのがわかるだろうか。

W2177760.jpg雄性花序では出口が用意されているのだが、それでも外に出られずに死んでしまう虫も

けっこういるようだ。ともかく雄性花序でたっぷりと花粉を体に付けた昆虫が、

この出口から外に出て、運よく次に雌性花序の納まった仏炎苞を訪れてくれれば、

受粉が成功するという仕組みである。

雌性花序の様子を見てみると、、、、。

W2177707.jpg緑色のとうもろこしの粒々のようなものが子房で、その先端にめしべがある。

そして、雌性花序では仏炎苞の合わせ目はピッタリ閉じており、

なるほどこの中で死んだ昆虫の死骸も多い。

W2177735.jpg死骸はすでにカビが生えたものもあって、かなり以前に囚われの身となったであろうことが

窺える。

草刈で4株ともなぎ倒されてしまったが、すぐそばの林内にもマムシグサは点々と生えていた。

じつはうちの近所にはあちこちにマムシグサが多数生えていて、

その開花時期もダラダラと長いので、こうした興味深い花の生態観察には

うってつけの場所でもある。

( 写真/ E-3  ズイコーデジタル35ミリマクロ+1.4倍テレコン )









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