昆虫少年

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御池小学校の講演からうちに戻って、ふと仕事部屋の小さな窓から外を眺めると

大きな捕虫網を抱えた少年が自転車でやって来た。

少年は今年の春から中学生。

最初、うちに来てくれたときは小学5年生のときだった。

「おお、久しぶりだね。どう、中学校の生活には慣れた?」

照れくさそうに挨拶する彼は、毎日の長い通学や学校での勉学の疲れを感じさせない。

私に会った瞬間から怒涛のように虫の話を切り出す元気な子だ。

「今日は何がお目当てだい?」

「あ、はい、スミナガシをまだ捕まえてないので、、、、、、」

「ちょうどねえ、うちのクヌギの一本が樹液をよく出し始めてねえ、、、

まだゴマダラチョウも見てないけど、樹液が出ていればスミナガシも来ると思うよ。

しばらく待ってみるかい?」

そうやって西向きの縁側に彼と並んで座ってみた。

カナブンやスズメバチはけっこう集まっているので、脈はある。

嫁さんが出してくれたスイカを二人でしゃぶりついていると、

目の前の草むらをリンネセイボウが歩いていた。

本種はマイマイツツハナバチに寄生するセイボウである。

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( 写真/E-620 ZUIKO 35ミリマクロ+1.4倍テレコン )

さっそく撮影して、モニター画面で拡大して見せてあげた。

「わあ~!!体の細かい点々模様もちゃんと見えるんですね!凄い!

こんな複雑な模様しているんですね。光のあたる角度で色も違って見えます!!」

ずいぶんと感激してくれたようだ。

そうこうするうちに、目の前にタマムシが飛んで来た。

L10207953.jpgさっそく彼が網で捕らえた。さすがに網の使い方は上手だ。

「あ、腹の下側がとても綺麗です!!ピンク色していて、、、、、、、」

タマムシはこのあと、もう一匹飛来した。

さらに待っていると、ほんとうにスミナガシがやって来た。

クヌギの樹液に落ち着くのを見届けてから、少年は静かに網を構えた。

L10207972.jpg大きなスミナガシだ。樹液を吸い始めたが、枝もあって網を振るのは難しい場所だった。

さすがに捕獲は失敗。

「でもね、必ず戻って来るからね、待ってみれば。」

そして数十分後。私の言葉通り、大きなスミナガシがふたたび舞い戻ってきた。

「来た!!スミナガシが来た!!」

「おお、やっぱりね。網の径が大きいからまた難しいねえ。」

「ここから、この角度でやってみて、大丈夫ですか?」

「う~ん、やばいなあ、、、、、。一気に振ってみるかい。」

「やってみます。頭の方から素早くやれば、、、、、、、、」

気合が入っていたせいだろうか、スミナガシはうまく網に入った。

すかさず少年は網を地面に伏せて網の口を閉じた。

「あ、捕れた!!」

「おおお!やったねえ!」

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L10208041.jpg嬉しそうに、満足気に少年はスミナガシを三角紙に納めた。

彼はなんという、ぜいたくな時間を過ごせたことだろう。

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