天蚕の繭

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東京都 新宿区

25日から東京に滞在し、今日が最終日。
午前中の打ち合わせを済ませると、あとは宮崎に戻るだけだ。
今回は6日間、隙間無くスケジュールを詰め込んだ。
あと一日、フィールド歩きの時間があったらと思うが、戻って宿題に取りかからないといけない。滞在したぶん、宿題も増える。

来春早々刊行する写真絵本の一冊は、天蚕(ヤママユ)のお話。
ヤママユ701A7782.JPG
写真の繭は、雑木林で見つかった繭。

左は、成虫が無事に羽化したあとで、羽化口が開いている。

右は、手に持つと重みがあり、揺するとカラカラ、乾いた音をたてる。
おそらくコンボウアメバチに寄生されているのだろう。
アメバチが蛹になったころ(ヤママユの蛹の中で)、この繭を開いてみようかと思う。

「ヤママユ観察事典」(偕成社)が、児童書の写真本としては初めての本だったが、私としての思入れは強い。ヤママユは野山に広く棲息しているが、人里の雑木林でも身近に見られる大型の蛾である。その大きく開いた美麗な翅は、怪しい瞳まで具えている。
そして、何より繭は絹糸(天蚕糸)を私たちに恵んでくれる。
魅力たっぷりなヤママユには、心惹かれる。

今回の新刊本の制作にあたって、
「ヤママユ観察事典」を作ったときには果たせなかった、長野県の安曇野市、穂高地区の取材、撮影を、今夏、2回に渡って実現できた。
天蚕の魅力に取り憑かれ、寄り添うようにして暮らす方々や、天蚕糸を紡ぎ織物を織る工芸家の方との出会いでもあった。

「ヤママユ観察事典」は、私なりに精一杯取り組んだと思うが、やり残したことも多く、宿題をたくさん抱えてしまった。一昨年、その宿題の一つ、ヨナグニサンの観察、撮影を少しだけ進めることができた。与那国島はとんでもなく遠い島だったが、今では森や海の様子を時々思い描くことができるようになった。今後も機会を見て最果ての島を訪れることだろう。

また、安曇野の地もかつて私にとっては遠い存在だった。が、今では安曇野の春、夏の光景を思い浮かべながら、次回の訪問時期をいつにしようか、とあれこれ考えている。

そして、一方、私は自分の住む宮崎県三股町の自宅林の整備作業も気にかけている。
多くの昆虫が出入りし、そのなかでもヤママユが毎年、ここで繭を紡いでくれるよう心掛けているのは言うまでもない。林の整備という山仕事はしかし、そうそう容易ではない。時間も必要だ。パソコンに向かっている時間が苦痛に感じることが多いのは、そのためでもある。
「椅子に座っている場合ではないだろう」、という声がいつも頭のなかで聞こえて来る。

さて、そろそろチェックアウトの時刻が近づいてきた。



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