クモのいと

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朝陽が林の縁から射し込んでいる。

その光条がゆっくりと動きながら、クモの網を浮き上がらせる。

網を構えたのは、チュウガタシロカネグモだ。

チュウガタシロカネグモは習性として水平円網を張るのであるが、

目の前に輝く糸網はほぼ垂直に近い角度になっている。

腹部背面が真珠光沢に輝く、けっこう綺麗なクモである。

W2079503.jpgもうじき出版予定の写真絵本は、「クモのいと」(ポプラ社)

前にも書いたことがあるが、今の家を探し当てて実際に物件を見に来たとき(3年前)、

ここに決めようと思ったきっかけの一つが、コガネグモだった。

ぐるりと家の周りを見ていくと、家壁のあちこちにコガネグモの卵のう殻がたくさん見つかった。

そのときは2月だったが、2回目の5月末に家族を連れて訪れたときには敷地の中や周辺の

草地で多数のコガネグモの網巣を見ることとなり、これは決定的だな、と思った。

クモは昆虫ではないが、体の大きさや生活環境は昆虫とほぼ同じであり、

しかも、クモの餌はそのほとんどが昆虫でもある。

昆虫とクモは切っても切れぬ縁で結ばれており、昆虫のなかにはクモを専門に狩るハチや、

クモに寄生するものもいる。

クモについてはそれほど詳しいわけではないが、私はかつてカマキリモドキの生活を

掘り下げていく中で、クモのこともいろいろと知る機会を得て、今に至っている。

クモのことをあらためて観察し始めてみて、クモの魅力を語るにはどういう形がいいだろうか?

と考えてみた。そこでまずは自らがまったくのド素人の立場でクモの何に感動し得たのか、

という原点に戻ってみることにした。

小さい子供たちを対象にしているが、一緒に本を開くお母さん方やお父さん方にも、

クモって、どんな生きもので、どこに魅力を見出してもらえるのか、という辺りを写真絵本に

まとめてみた。

クモの生態を紹介した写真本はすでに児童書でも優れたものが何冊かある。

しかし、私はクモの生態を掘り下げるというよりも、散歩がてらに興味を抱ける範囲で

写真絵本を作ってみた。誰でもが、ちょっと草むらに出掛けて自分の目でもすぐに体験できる

そんなきっかけ作りが大事だと思った。普段は気味悪いくらいに感じていたクモたちに、

ふと興味を抱く瞬間を私の本から掬いとっていただければ、と願っている。

( 写真/  E-520  シグマ105ミリマクロ )


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