土筆を味わう日々とは

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午後4時半すぎ。

窓から外を眺めると、下校してくる子供の姿が遠くの畦道に小さく見えた。
今日は良く晴れて気温も上がったので、上着を小脇に抱えてTシャツ姿だ。

ではと、覗いていた双眼鏡を片付け私は犬を連れてその方角へ散歩に出てみた。
私の歩みは遅い。そしてTシャツ姿のわが子とは正反対に、私は肌寒く感じてジャケットのフードを
思わず被った。

W2105878.jpg畦道や田畑を覆う草むらは、日に日に緑色が濃くなり立ち上がってきている。

W2105880.jpg1月に野焼きした土手では、春の草花が目立ち始めた。
焦げたススキを眺めながら、昨年の4月に通った阿蘇山のキスミレ群落を想い浮かべる。

昨年はビデオの仕事で初めてキスミレ群落を撮影したのだが、
今年はプライベートな写真撮影で是非また出掛けてみたいと思う。

W2105884.jpg土筆は嫁さんも私も好物で、春の食卓には欠かせない食材となる。
畦道のある場所では、とても密度が濃い。
そんな場所を嫁さんは犬の散歩の折りに見つけては、報告してくれる。

長らく犬の散歩から遠ざかっていた私も、今日は久しぶりにその秘密の場所へ立ち寄ってみた。







さて、先月の18日から10日間、私は家を空けた。

なぜなら、ある手術を受けて入院していたからであり、
その間、このブログは自動更新するつもりで準備しておいたが、うまく機能していなかったことはすでに書いたと思う。

つまり今日、私は退院してからちょうど10日目を迎えた。
お腹を大きく切開したこともあり、通常の体力に戻るまで、まだ少し日数が掛かる。
歩き方も脇腹をかばうようになって、すこしいびつかもしれない。
咳き込んだりすると、縫合箇所が猛烈に傷む。だから風邪などひくとたいへん!
胡椒を嗅ぐのも禁物!!

しかし日常生活にはおよそ支障なく、デスクワークや敷地内での撮影活動などはもう再開している。
一昨日は、講演も行ってきた。ギリギリの日程でキャンセルせずに済んだのは幸いだった。

ただし1時間もフィールドを歩き回ると、これはけっこう後で堪える。
だからしばらくは昆虫観察会の講師の仕事などは無理のようだ。
4月に入ればなんとか大丈夫だろう。それまでは少しづつ体調を整えていくしかない。

私のある臓器に悪性腫瘍が見つかったのは2月のはじめだった。
そのときは、たいへん落ち込んだ。
自分は50年も生きたのだから、この歳で諦めるしかないか、とまで死を覚悟したりしたが、
家族のことを思うと、そう潔いことばかりも言えず、辛い日が続いたのは事実。

悪性腫瘍のある場所はとても危険で、転移が速いことから、手術を急いで受けることになった。

癌のことをいろいろ調べていくと、どんどん暗い気持ちになったが、
ともかく手術のうまくいくことを祈るしかなかった。

19日正午、私は手術室の寝台に横たわった。
手術を開始するまでは、いたって健康でまったく自覚症状もない私だったが、
将来襲ってくるであろう危険を回避するために、あえて病床につく身となるのはやむを得ない。
4時間半の手術は無事に終わった。

術後の経過は順調で、日ごとに元気を取り戻していった。

そして、今日。手術後の細胞検査結果を聞いてみれば、悪性の所見は見つからず、
つまり癌の危険性がないことがわかって、一安心できた。
抗がん剤治療も覚悟していたのだが、その必要もないということだった。
これから先、3ヶ月ごとに検査は受ける。そして一年に一回、CT検査。


これまでに、私の病状や手術の経過をご心配いただき、
励ましの言葉をかけていただいた方々に、
心から感謝し、そしてお礼を申し上げます。
ほんとうにご心配おかけしました。

健康診断をたまには受けておくことの重要性を、今回ほど強く感じたのは言うまでもありません。
あと1年、あるいは2年もほったらかしにしていたら、
余命3年!などという、深刻な事態になっていたはずだからです。

明日はまた、土筆の卵とじを嫁さんと味わうつもりです。
子供たちは土筆には見向きもしません。
こんなところに世代の違いを感じます。

今夜はビールを一杯だけ飲んでみました。















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