アベマキとナンジャモンジャノキ(その2)

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20日、日曜日、松山城ロープウェイ街通りの店の多くは閉店しており、

人通りも少なかった。 いつも訪れるうどん屋「車井戸」もシャッターが降りていた。

東雲神社の裏手にある森は、松山城全体を覆う森につながる。

小学生の頃、階段を上り詰めてすぐの森で、初めてクワガタ採りに参加した。

実際、クワガタを採ったのは数人を引き連れたリーダー格の同級生で、

彼は何においても先頭に立つ、まさにガキ大将であったのだ。

私は彼の言うなりにしたがい、ついて行ったに過ぎず、

あるアベマキの樹上に登ったのは、彼ひとりであった。

アベマキCIMG3249.JPG「ここがクワガタムシの巣やけん。お前ら下で待っとけ!」

彼が見つけた秘密の場所だったようだ。

口をあんぐり開けて見上げる私らを見下ろし、彼は樹のうろに手を突っ込んでいた。

「おお!おったぞ!」

その声に皆、興奮した様子で、手を差し伸べる。

摘んで渡されるのは、たしかにクワガタだが、だいたいはコクワガタのメスであった。

とても小さい。 立派な大アゴなんかない。立派なオスは、大将の懐に納まった。

「ぼくは昆虫カメラマン」(岩崎書店)でも書いたが、私に昆虫少年という時代はなく、

誘われればついていく程度で、むしろ樹液レストランの賑わいを目にしても

オオスズメバチの恐怖にビビるだけの、どこにでもいる普通の男の子であった。

それでも、クワガタムシへの憧れを瞬間的に抱き、デパートで売られていた

ノコギリクワガタ♂をたしか300円で買い求めたことが一度だけある。

買ったあとでものすごく後悔した。 ノコギリクワガタを家に持ち帰っても

全然、嬉しくも楽しくもなく、なんでこんなことしたのだろう、と辛かった。

自分の手でクワガタムシを採集できなかった悔しさが、こんな愚かな買い物を

させたのだろう、と気づいたのは中学生になってからであった。













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