ホタルの記憶

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幼少の頃、母親に連れられ、毎年のこと蛍狩りに出掛けた。いや、蛍狩りが目的だったかどうかについての記憶はあやふやだが、田舎の親戚のうちを訪れたあと、帰り際に暗くなった小川に佇んでいただけかもしれない。暗闇のなか、どこから川の縁なのかわからないほど、草むらに覆われた不気味に感じる小川だった。もちろん、ホタルは無数に乱舞していた。目の前の全ての空間をホタルの点滅が占めていたと思う。その当時の光景についての記憶は曖昧だが、ホタルの放つ独特な香りの記憶だけは、一番鮮烈に残っている。今日も、ふと、その香りを嗅いでみたくなり、ゲンジボタルのオスをそっと、摘んでみた。
ゲンジボタル_MG_8546.JPG玄関を出て数分で、わがやの林の縁で休む、ゲンジボタルに会える。その数は日を追うごとに増えてきた。今朝は5頭のオスが次々と見つかった。手から放つとゆっくり飛び立ち、別のササに着地。
彼らの動作はいかにも緩慢である。その理由は、鳥などの天敵に食べられない、ゾ!という自信でもあろうか。着地したあと、ササの葉についていた朝露をうまそうに、吸い上げていた。
ゲンジボタル_MG_8554.JPG

もうだいぶ前から、夜景の中を乱舞するゲンジボタル写真撮影については、まったく意欲を感じなくなった。世の中に溢れんばかりに出回る写真について見ていると、もう今更という気がする。

翻って、昆虫写真家の自分としては、世の中に対していかなるメッセージを送るべきなのか、を常に考える。仕事とはそういうことだろうと思う。

本の仕事が何冊も並行している中で、スタジオ撮影も過密になってきた。この先2年は続く撮影のため、スタジオの一角はそれ専用のスペースになった。何回も撮影方法を変更したが、もう一度さらに組み直すことにした。その作業だけで午前中いっぱい掛かりそうだ。
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